二十億光年の孤独
谷川俊太郎著。創元社刊。初版昭和27年6月20日(注意!重版も存在します!)。定価180円。カバ帯完本(表カバー中央に帯を貼り付ける異色の装釘。)帯文三好達治。角背上製。元パラ付き。
谷川俊太郎は、1931年東京生。父は哲学者の谷川徹三。東京都立豊多摩高校卒。三好達治の紹介で『文学界』に「ネロ」他数編の詩篇を発表して注目される。昭和27年第一詩集『二十億光年の孤独』を創元社より発行。のびやかな若者らしい清新な詩風で詩壇に登場する。『歴程』同人を経て茨木のり子が主宰する『櫂』同人となる。詩集に『62のソネット』『愛について』『あなたに』など多数。エッセイ集に『愛のパンセ』『世界へ!』など。『絵本』という自撮写真を貼り付けた異色の書物も存在する。
谷川俊太郎の詩風は戦前の抒情詩とは大きく異なる、明るくのびやかな詩風で自己の生命や青春を明るく肯定してゆく点にある。その輝かしい青春への頌歌は戦後の詩壇に瑞々しい息を吹き込み、やがて谷川俊太郎は戦後詩壇を牽引する大詩人へと成長してゆく。現在でも詩壇内はもちろん、詩壇外での一般的人気・知名度も非常に高く、まさしく「戦後を代表する詩人」と言っても過言ではない。
さて本書は、名実共に戦後を代表する大詩人・谷川俊太郎の第一詩集である。それ故、戦後詩史において極めて重要な位置を占める詩集である。三好達治の序詩を収録している他、初期の重要な詩篇である「ネロ」「生長」「かなしみ」などを収録する。この第一詩集発表後に谷川俊太郎はさらに大きく飛躍してゆくが、その出発点となった詩集という意味で本書の持つ意味は大きい。
さて本書には重版が存在している他、帯欠本も多い。帯がカバーのレイアウトに大きく貢献している詩集であるだけに帯付き完本を入手しておきたいものだ。
状態はそれほど悪い本は少ない。また一時期全く出ない時期もあったが、昨今はまた出るようになったので賢明なコレクター諸君は「今が買い時」と思って早めに入手しておくのが良いだろう。古書価は昔からそれほど高い本ではないが、完本ならやはり五万円以上は覚悟しなくてはならない。
(黒猫館&黒猫館館長)