「祈り」
再び「聖域」。
地下から聞こえてくる激烈な爆発音。
そして気味のわるい絶叫と
異様な笑い声。
「黒猫館館長」
なんだ?
この震動と爆発音は?
この「聖域」の下でなにかが起こっている。
影姫よ。
なにかわかるか?
「影姫」
先ほど、爆発音が聞こえた瞬間に光姫からの念波が途絶えました。
「黒猫館館長」
まさか光姫の身になにかが・・・?
「影姫」
いいえ。
あの子はこんな爆発ぐらいでどうにかなるほど、弱い子ではありません。
そのことは現実の姉であるわたしが一番よくわかっています。
わたしは信じています。
あの子は絶対に無事で帰ってくると。
「黒猫館館長」
そうだ。
まさしくそのとおりだ。
今、我々に出きることはただひたすら「待つ」それだけだ。
ほえ〜!!
ほえほえ〜〜!!!
「黒猫館館長」
この声は。
「土野雨郎」
館長様!!
雨郎只今到着しただす!!
と土木作業用のヘルメットとなぜか「ツルハシ」を持った土野雨郎が走ってくる。
「影姫」
土野。
ずいぶん遅いですね。
「黒猫館館長」
土野君。
君はいつも出遅れているな。
「遅れてきた青年」。
いや「遅れてきた中年」というべきか?
「土野雨郎」
く・・・くひーーーーーーーー!!!
キビチイお言葉!!
しかし!!
わだすの目標は映画評論家として「蓮見重彦」に追いつき追い越すことだす!!
「黒猫館館長」
その調子ではあと30年たっても「蓮見重彦」に追いつくことはできないだろうな。
「影姫」
まず「映画評論」の一本でも書いてごらんなさい。
話はそれからです。
「土野雨郎」
ほえ!!
お二方のあまりにキビチイお言葉!!!
しかし!!
わだすは目指すだす!!
映画評論界のスターの座を!!!
はむは〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!
ロボロボ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!
二匹のハムスターの鋭いオタケビが「聖域」にこだまする。
「ハムちゃま」
ハムちゃま再びさんじお!!
「ロボくん」
ロボだロボ。
「ハムちゃま」
館長様!!
ロボのやつがど〜〜〜〜しても来たいというから連れてきまちた!!!
「黒猫館館長」
うむ。
ロボくんか。
ところでロボくん。
君は「ウサギとカメの話」を知っているのかな?
「ロボくん」
そのおはなしなら「黒猫図書館」にある『キンダーおはなし絵本』の一冊に入ってたから読んだロボ。
「黒猫館館長」
うむ。
勉強熱心だな。
よろしいロボくん。
そのような「たゆまぬ努力を継続できること」こそ君の「才能」だ。
確かにハムちゃまは「天才ハムスター」であり全ハムスター界のトップであることは事実だ。
しかし。
ロボくん。
君がそのようなたゆまぬ努力を続けていくならばいつかはハムちゃまを追い越すことが出きるかもしれぬ。
「ロボくん」
わかったロボ。
「ハムちゃま」
猛〜〜〜〜〜!!!
館長様ったらロボばっかりひ〜〜〜〜〜きにして!!!
聖域の扉が重く開く。
そして入ってくる二人の若者。
「豚男」
影姫様、、、
豚男只今戻りました。
「水着フェチX」
あ、、、
みなさんどうも。
やっぱ、
黒猫館が燃えてしまったらボクの競パンのコレクションも燃えてしまうっすから。
「影姫」
豚男。
水着フェチX。
貴方たちふたりには後日懲罰調教を行います。
覚悟はよろしいですね?
「豚男&水着フェチX」
う・・・
うわ〜〜〜〜〜ん!!(嬉し泣き)
「浮世トミエ」
どうも。
みなさん。
「黒猫館館長」
トミエさん。
あなたまで戻ってきてくれたのか?
「浮世トミエ」
館長様。
どうもうちの亭主がこの場所でわたしを呼んでいる気がするんです。
そうしたら、やっぱり地上にはいられなくなって。
「黒猫館館長」
浮世君があなたを呼んでいる。・・・
確かにそういうこともあるのかもしれぬな。
「優」
館長様。
ボクも帰ってきました。
「黒猫館館長」
優君か。
・・・
影姫。
優君に言いたいことはなにかあるか?
「影姫」
優。
もうわたしたちは特殊な関係の間柄ではありません。
今後は「自立したふたりの人間」として付き合ってゆきましょう。
優。
「卒業」です。
貴方は本日、西暦2005年2月20日をもって「奴隷」ではなくなりました。
今後は黒猫館の地上で与えられた職務を遂行しなさい。
「ひとりの誇りをもった大人」として。
「優」
影姫様。
わかりました。
「黒猫館館長」
ところで影姫よ。
お前の側近のガードノイド・K氏はどうした?
「影姫」
Kは地上で警備を担当しています。
いくら非常事態でも地上が無人になるのはあまりに危険ですから。
「黒猫館館長」
なるほど。
それではこれで黒猫館住人はすべて揃ったということになるな。
もちろん。
ただ一人を除いて。
では皆で祈ろうではないか?
光姫の無事を。
今のわたしたちにできることはそれしかない。
「全員」
わかりました。
館長様。
目を瞑り、祈りに入る黒猫館住人たち。
「聖域」を静寂が支配する。