心理試験完結編第九章
「神」

 

 

 

「黒猫館守護神」

光姫。
「神」についての貴方の意見を述べなさい。 

 

「光姫」

ヨーロッパにおける「神」の問題は19世紀末に、
ドイツの哲学者、フリードリッヒ・ニーチェによる「神は死んだ」というショッキングな問題提起から新たな展開を見せ始めました。

すなわち。
カール・ヤスパースの「哲学的信仰」の問題。
そして米国を中心とする「神の死の神学」。

これらは「神の死」以後、どう「神」に対する信仰を続けられるのか?
という「神」の問題に対する苦闘の成果です。

しかし。
日本人がこのような思想展開を理解し真に自分の精神的血肉とするのは非常に困難です。
なぜなら。
現代の日本人の多くは最初から『神』『宗教』に対して関心がないからです。

日本人の多くは「仏教」をその「家」の宗教としています。
しかし。
「仏教」を真に信仰している日本人が現代どのくらいいるでしょうか?
「仏教」は日本では結局、庶民レヴェルまで根付かなかった。
これがわたしの見解です。

現代の日本人に影響を与えている宗教といえばかろうじて「儒教」があげられます。
しかしそれとて日本人の「道徳」に多少影響を与えた程度で到底信仰と呼べるものではありません。

これは憂慮すべき事態なのでしょうか?

わたしは無神論・無信仰を信条とする人間です。
しかし。
「宗教」の問題は見過ごすことのできない問題だとわたしは考えます。

あの「オウム真理教」事件を記憶なさっておられる方も多いと思います。
なぜ事件を起こした若者たちはあのような危険な集団に引き込まれていったのでしょうか?

わたしの見解を述べましょう。

彼らはあまりにも「宗教」を知らなすぎた。
それ故、「宗教」というものの恐ろしさに気づけなかった。
つまり。
あまりに無防備であるが故にアリ地獄のような「オウム真理教」にのめり込んでいったのです。

「宗教」とは諸刃の剣です。
時には素晴らしい効用があるかもしれません。
しかし時には大虐殺の引き金になる危険を含んだ劇薬なのです。

それ故。
「宗教」について「知らないではすまされない」のです。

21世紀。
わたしは人間に「信仰」はもう必要ないと考えます。
しかし人間は「宗教について学ばなくては」いけません。

そうでなくてはまた「宗教」をめぐる悲劇が繰り返されることは眼にみえています。

現に「霊感商法」で金銭を騙し取られた人。
重病を「お祓い」で治そうとしたがなんの効果もなかった人。
などなどが現代の日本には沢山います。

「信じる必要はない。しかし理解する必要はある。」
これがわたしの「宗教」に対する姿勢です。 

 

「黒猫館守護神」

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