星を継ぐ者

 

 

 

<黒猫館館長>

こ、、、これは守護神様の啓示!?
いや、もしかして全員に聞こえているのか!?

<光姫>

清らかなお声。
はっきりと聞こえております。

<影姫>

この声がわたしたちの守護神様の声だったのですね。 

 

<黒猫館守護神>

最後まで残った六人の黒猫館住人たちよ。
お聞きなさい。

これはもう「啓示」でありません。
あなたがた全員に送る「メッセージ」です。

「存在の長」は人間がどう戦おうと勝てる相手ではありません。
しかし。
さきほどのくらやみ男爵とのあなたがたとの戦いをわたしはずっと見ていました。
あなたがたはどんな窮地に追い込まれようと決して「希望」を捨てなかった。
希望とは抽象的な目標としての「理想」ではありません。
人間が必死で生きようとすること。
限りある生命を悔い残すことなく燃焼しつくそうとするまさにその瞬間に、
閃光のようにこの冥い「宇宙」に輝き、そして照らしめるもの。
それが「希望」なのです。

わたしはもうこの惑星βー1118から立ち去ろうと思っていました。
それほどもはや現代はこの惑星の住人から「希望」が失われ、徐々に「滅亡」に向かっている。
そのように感じられたからです。

しかしあなたがたのような人間がまだ残っているなら、
人間は「次のステージ」に進むことができるかもしれない。
そのようにわたしは思いました。

これがわたしがあなたがたに「メッーセージ」を送る動機です。

 

<黒猫館館長>

「次のステージ」とは?
それは人間が進化するということなのですか?
守護神よ。 

 

 

<黒猫館守護神>

あなたがた人間が現在考えている生物学的な「進化」のことではありません。
人間が「希望」を失わないかぎり、あなたがたの霊的能力はこれからもどんどん向上してゆくことでしょう。

そこにいる「光姫」。
彼女こそその明確なサンプルです。

彼女の霊的能力は実は生まれながらの「才能」ではありません。
彼女がどんな時でも「微笑み」と「明るさ」を絶やさず、疲れきった人間たちを労わり、そして癒しめること。
そのことが彼女の「霊的能力」の本当の源なのです。

そうですね?
光姫。

 

<光姫>

はい。
守護神様。
そのとおりです。

わたしの能力は生まれついてのものではありません。 

 

<黒猫館守護神>

人間が人間に対し「いたわりあい」、そして「癒しあうこと」。
そのような形態が人間の人間としての本来の姿なのです。

その逆に憎しみ合い、そして争いあえば人間の霊的能力はどんどん後退してゆくことでしょう。

わたしは今回の「聖域」での戦いで本来の人間同士の姿をみました。

黒猫館館長をかばって命をおとした浮世渡郎。
指導者として全員の結束に力を尽くした黒猫館館長。
そして地球人類のために捨て身でくらやみ男爵に挑んだ光姫と影姫。

このような者たちであるならば。
人間は「次のステージ」である「超人」、そしてさらには「神」への道を進むことも不可能ではないとわたしは判断したのです。
 

 

<黒猫館館長>

人間が神への道を進むですと・・・ 

 

<黒猫館守護神>

「存在の長」は全宇宙にその触手を伸ばしています。
今回、その「聖域」に現れたのはその触手の一本に過ぎません。

わたしが「神」としての全能力をマックスまで引き出すならばその触手の一本を破壊することも不可能ではありません。

しかし。

「存在の長」の本体はこの銀河系から一億8000万光年離れた馬頭座星雲超銀河集団に存在しています。
次の攻撃があるのは恐らく、7万5000年後です。
しかし全宇宙的な時間でみれば7万5000年などという時間は神の眼の瞬きほどの時間でしかありあせん。

その間にあなたがた、人間が「存在の長」と互角に戦うことができるまで霊的能力を向上できるかどうか?
つまりあなたがたが、わたしの「神」としての生命を賭することのできる存在であるのか?否か?
それをわたしはこれから試そうと思います。

六人の黒猫館住人たちよ。

われこそはというものは名乗りでなさい。

しかし地球人類のすべての運命はその者の肩にかかるのだということを肝に銘じなさい。 

 

<黒猫館館長>

これはもう。
決まっておるな。

われわれのなかで一番若い光姫。

おまえが行きなさい。

いつの時代でも歴史は若者の希望の力によって切り拓かれてきた。
だから光姫よ。
わたしたちは全く心配していない。
すべて「OK」だ。

安心して行きなさい。

<影姫>

光姫。
人類の運命など考える必要はないです。
ただ己に勝つことそのことだけを努力しなさい。

そうすれば必ず道は開けます。

さあ。
お往きなさい。

 

 

<光姫>

了解しました。
館長様。
オネエ。

光姫、
行きます!!

 

その瞬間まばゆいばかりの光源の世界が光姫の眼前に出現した。