剣禅一体
<黒猫館館長>
くらやみ男爵。
長い戦いもそろそろ終わりだ。
わたしは今からこの剣でおまえを屠る。
覚悟は良いな。・・・
<くらやみ男爵>
なかなかの気迫・・・
ふふ。
そうでなくては・・・
そうでなくてはな!
殺し合いというものの面白みも半減してしまう。・・・
よかろう。
全力で相手をしてやる。
おまえが老人であろうがなかのうが関係なく。
<黒猫館館長>
おまえは人間の負の感情をエネルギーして強大化する妖魅。
光姫も影姫もおまえの精神攻撃によって冥界に送還された。
それならば。
おまえを御するにはまず自分の感情を滅却しなくてはならぬ。
「敵に向かって 生を忘れ 死を忘れ
敵を忘れ 我を忘れ 念動ぜず 意を為さず
無心にして 自然に委ねるときは
変化自在 応用無碍なり」
(日本武術指南書『天狗芸術論』より引用)
わたしは若い頃から「日本」という国に憧れ、研究を重ねてきた。
わたしがウェブ・サイト「黒猫館」の表記をすべて日本語にしてあるのもそのことと大いに関係がある。
日本人には誇り高きサムライの精神=「BUSHIDO」がまだ生きているという。
「BUSHIDOU」の基本は「剣禅一致」つまり禅に冥想するがごとく剣を行い、剣を操るがごとく禅を行うということだ。
つまり、、、「BUSHIDOU」の極意とは敵を斬るのではなく自分の負の感情を斬るということだッ!!
聖剣エクセリオンを構えたまま、ゆっくりと両目を瞑る黒猫館館長。
<くらやみ男爵>
ふふ。・・・
ふぉーーーーふぉふぉふぉーーーーー・・・
目を瞑ってどうする。・・・
唯でさえ鈍いおまえの動きがさらに鈍くなるだけではないか?・・・
ええい!!
黒猫館館長、ここに惨死す!!
無間冥界呪法
「百鬼夜行」
<Ψ>
!!
くらやみ男爵の周りに突如出現する奇怪な小妖怪たち。
その数は100匹以上に見える。
今、黒猫館館長に向かって小妖怪の群れが猛スピードで飛びかかっていった。
<黒猫館館長>
・・・・・・・
破邪剣技
「観」
!!
<小妖怪>
キィ・・・キギィエエエーーーーーーーー!!!
黒猫館館長が聖剣エクセリオンを唯、一回のみ振った。
次の瞬間、小妖怪たちは緑色の血糊を噴出して崩れ落ちてゆく。
<豚男>
凄い!!
<隷>
こ・・・これは居合!?
<ヤプー一号>
ヤプーだって感動しました!!
感動しても弱いけど。・・・
<水着フェチX>
ボクもう館長様に惚れちゃったっす!!
<怪人M>
え〜〜と。。。
え〜〜と。。。
フーリエの物理法則から見てもこのような現象には普遍妥当性が薄いのかと・・・・ん??
<くらやみ男爵>
ふふ・・・
ふぉーーーーーふぉふぉふぉーーーー・・・
意外とやるではないか?
館長よ。
そうでなくては・・・
そうでなくては面白くない。・・・
<黒猫館館長>
くらやみ男爵よ。
おまえが放った小妖たちは普通の人間には百匹以上に見えていたはずだ。
恐らくここにいる黒猫館の奴隷たちの眼にもそう映ったに違いない。
だが意識を滅却し、「無」の境地に達しているわたしにそのような脅しは効かぬ。
くらやみ男爵!!
おまえが放った小妖は実はたったの一匹だッ!!
おまえに対する恐怖・畏れ・小心さがただ一匹の妖怪を百匹以上に見せていただけだ。
わたしはただ一匹の小妖を斬ったに過ぎぬ。
その瞬間、その周りで渦巻いていた小妖の幻がすべて消滅した。
くらやみ男爵ッ!!
もうこけおどしは通用せぬぞ!!
次はおまえが斬られる番だッ!!!
<黒猫館館長>
破邪剣技
「衝迫」
!!
黒猫館館長が聖剣エクセリオンを大きく振りかぶる。
そして一気に振り下ろした瞬間、エクセリオンから金色に輝くブーメラン状の光の刃が放たれた。
<くらやみ男爵>
きいィィ・・・!!
無間冥界呪法
「鏡面(きょうめん)」
!!!
くらやみ男爵の四方に鈍く輝く障壁がまたも出現する。
しかし黒猫館館長の放った光の刃は障壁を突き破ってくらやみ男爵の顔面にヒットした。
くらやみ男爵の顔の右半分がポッカリと抉られた。
<くらやみ男爵>
ぐげええィィイ!!!
<豚男>
やった!!
<隷>
初めて!!
<ヤプー1号>
くらやみ男爵に!!
<水着フェチX>
一撃くらわしたっす!!
<怪人M>
え〜〜〜と。。。
え〜〜〜と。。。
フーリエの理論によればこのような場面では喜ぶのが普遍妥当性があるのかと・・・ん??
<くらやみ男爵>
お・・・お、お・の・れ・え・・・・・
許さん・・・
わたしの顔面を抉るとは・・・
許されん・・・
絶対に許さんぞ、、、、・・・
<黒猫館館長>
どうやらおまえの持ち駒の底も見えたな。
くらやみ男爵よ。
いまからわたしはおまえをこの手で全力で屠る。
おまえのために犠牲になった浮世渡郎と三毛猫室長の霊に誓ってな。
聖剣エクセリオンを構える黒猫館館長。
そして猛然とくらやみ男爵に向かって走り出した。
<黒猫館館長>
人間の痛みをおまえも味わえええッッツ!!!
<豚男>
館長様!!
<隷>
接近戦はまずいです!!
<ヤプー1号>
かっこいいけど・・・
ちょっと危ないと思う・・・
館長様は・・・強いけど。
<水着フェチX>
もう館長様ったら、今度ハッテン場に招待するっすよ!!
<怪人M>
え〜〜〜〜と。。。
え〜〜〜〜と。。。
フーリエの理論によるとくらやみ男爵に接近戦を挑むのはちょっと普遍妥当性に欠けるかも・・・ん??すると危険!?
ガツッッッ!!!
くらやみ男爵のエレザールの鎌が黒猫館館長の聖剣エクセリオンを遮った。
ぎりぎりとせめぎ合う二人。
<くらやみ男爵>
館長よ。・・・
おまえは絶対にこう出ると思っていたよ・・・
ふふ。
<黒猫館館長>
どういうことだ?・・・
くらやみ男爵!?
<くらやみ男爵>
こういうことさッ!!
その時、くらやみ男爵の胸付近から八本のアバラ骨が飛び出した。
アバラ骨はまるで生きた触手であるがごとく黒猫館館長の胴を挟み込んだ。
<黒猫館館長>
卑怯な!!
貴様というやつはどこまで卑怯なのだッ!?
<くらやみ男爵>
戦いに卑怯もなにもない・・・
あるのは勝つか負けるかのみよ。
館長よ。
おまえがわたしの小妖たちを斬った時はさすがのわたしもヒヤリとしたよ・・・
あの時、おまえの心にはまったく邪念が無かった。
わたしのつけいる隙も全くなかったのだ。
しかし今のおまえの心はもう<無>ではない。
さまざまな<負の感情>が渦巻いておる。
なぜだかわかるか?・・・
ふふ。
ありとあらゆる武術格闘の世界では「守り」に徹している限り、絶対に敵の攻撃を受けることはない。
しかし「攻め」に入ったとたんその鉄壁の防御は失われ、「隙」が生まれる。
これは武術格闘の世界に生きる者なら必ず一度はぶちあたる「壁」だ。
「攻防一体の戦陣」
それこそがありとあらゆる武術格闘の目指すべき理想形。
黒猫館館長よ。
おまえはまだまだそこまでの境地に達していなかった。
おまえが習得した「BUSHIDOU」も所詮その程度のレベルの老人の日曜趣味に過ぎぬ。・・・
さあ、もう本当に終わりだ。
内臓を潰し、骨を完璧に粉々にしてやる。・・・
くらやみ男爵のアバラ骨がめりめりと黒猫館館長の胴にめり込む。
<黒猫館館長>
ウグッ!?・・・
ウぐア〜〜〜!!!
ゴゴ
<くらやみ男爵>
ん?なんだ?
ゴゴゴ
<くらやみ男爵>
この異様な震動は・・・?
ゴゴゴ
<くらやみ男爵>
これはもしや・・・
ゴゴゴゴゴ〜〜
<くらやみ男爵>
やはり!!
障壁が破られたか!?
お、おのれ〜!!!
ゴゴゴゴゴゴ・・・・ドォーーーーーーーン!!!
暗闇に差し込む一条の光。
そしてその光は少しづつ大きくなりやがて巨大なトンネルが空間に出現した。
<黒猫館館長>
還ってきたか。・・・
やはりな。
・・・絶対に還ってくると信じていたぞ。
おまえたちふたりであるならば。・・・
おまえたちふたりであるならばな。
光のトンネルから二人の人影が踊りでた。
<光姫>
光姫見参!!
<影姫>
影姫、、、見参。
<光姫>
館長様、お待たせしました!
今からわたしたちが決着をつけます!!
<影姫>
貴方・・・。
わたしたちがいない間、よく堪えてくださりました。
しかしもう下がってください。
これからわたしたちが大いなる邪を討ちはたします!!
<光姫・影姫>
オルフェウスの巫女たる光と影、今こそ一体となって大いなる邪悪を滅殺せん!!!
光のトンネルの前に立つ「ふたりの戦士」。
彼女らの表情にはもうかってのような迷いはなかった。
戦いの決着は近い。
光姫、影姫、黒猫館館長、優、
すべての人物の運命のうねりは今、クライマックスへと加速してゆく。