審判の日

 

<光姫>

くらやみ男爵ッ!!
今こそあなたを滅殺します。
覚悟しなさいッ!!

光姫、参る!

<影姫>

光姫、
いけません!
心を鎮めなさい!

<光姫>

オネエ!!
もうすでに黒猫館住人二人がくらやみ男爵の犠牲になっています!
冷静でいられるはずもないです!!

<影姫>

くらやみ男爵に憎悪を向けてはいけません!
負の存在に負の感情で立ち向かっては逆効果。
それはあたかも火に油を注ぐが如し。
とにかく鎮まりなさいッ!!

<光姫>

このッ!!
いくじなしのオネエッ!!

光姫、今度こそ参る!!


 

破邪高等神技<光の嵐>!!

光姫の両腕が踊るように回転を始める。
それにつれて輝き出す無数の光の曲線。
光の曲線はやがてブーメラン状の形態に変化してゆく。

今、無数の光の輪が高速で回転しながらくらやみ男爵に放たれた。 

 

<くらやみ男爵>

ふふ・・来たか・・・

ええぃ!!  

無間冥界呪法
「鏡面(きょうめん)」
<φ>

  

突然、くらやみ男爵の四方に鈍く輝く障壁が出現する。
そして光の輪はあたかも壁にぶつかった弾力のあるボールのようにそのまま光姫にはじき返された。

 

<影姫>

危険ですッ!!
光姫!!

防御なさいッ!!

<光姫>

オ・・オネエッ!!
駄目ですッ!!

防ぎきれません!!
速度が早すぎますッ!! 

 

(はじき返された光の輪が光姫を襲う。
光の輪は鋭利な剃刀のように、
光姫の
左頬、
右腕上腕部
右脇腹、
左足膝付近
の四箇所にヒットした。

たちまち血を噴き出しながら吹き飛ばされる光姫。) 

 

<影姫>

ひ・・・ッ・・・

光姫ッ!!

<黒猫館館長>

全員、光姫の回りで身をもってバリケードを組め!!
影姫!!おまえが早急に光姫の傷の手当てをしろ!!

 

二人と一匹が光姫の回りを囲む。
傷ついた光姫を抱きかかえる影姫。

 

<光姫>

オネエ・・

大丈夫です。
傷は浅いです。

でもくらやみ男爵は強すぎます。
わたしの高等奥義を持ってしてもまったく歯が立ちません。

もうどうしたらいいのか・・・

<影姫>

諦めてはなりません。
今度はわたしも一緒に戦います。

だから光姫。
希望を捨ててはいけません。 

 

<くらやみ男爵>

ふふ・・・ふぉーーーーーふぉふぉふぉーーーー・・・

弱いッ・・・
弱すぎるわッ!!
光姫よ。

その程度の実力でわたしを滅殺できると思っているとはな。

ところで、うるわしい姉妹愛だな、影姫よ。
しかしおまえが冷静さを装っていられるのもここまでだ。

これからおまえは正気を失う。
おまえにも来るのだ地獄が、これから。

 

<影姫>

くらやみ男爵。
どういうことです?
貴方がお得意のこけおどしは、
わたしには通用しませんよ。 

  

<くらやみ男爵>

こけおどし?・・・

ふふ・・・ふぉおおおふぉふぉふぉーーーーーーー!!!

本当にそうかな?
影姫よ。

ところで、この世でおまえが最も愛する者は誰だ? 

 

<影姫>

もしや・・・
なんという。
なんという卑劣な・・・ 

 

<くらやみ男爵>

そうだ。・・・
おまえの心配は的中している。

「優」。
本名無し。
1988年ニューヨークにて生。
両親は日本人娼婦と米国上院議員。
7歳まで孤児院で暮らす。
8歳で人身売買組織「MMM・カンパニー」に買われる。
そして1994年12月24日クリスマスイヴ。
ニューヨーク・マンハッタン・8番街、
ハード・ゲイ・クラブ「デッド・ハウス」にて「奴隷市」に出品される。
当時7歳。

そして影姫。
おまえがアラブ人富豪との競り合いの末、一億円で競り落とした。
その後黒猫館へ「奴隷」という名義で召喚。
現在に至る。
この経緯は影姫よ。
おまえが一番良く知っている筈。

 

<影姫>

くらやみ男爵。
貴方はいったい何を・・・ 

 

<くらやみ男爵>

わたしがその気になれば、
地上にいる「優」の首を遠隔操作で落すことなど簡単だ。
 

いくか?
ポトリとな・・・?

 

<影姫>

卑劣な。・・・
わたしは貴方を許しませんッ!!

くらやみ男爵!!! 

 

 

<くらやみ男爵>

おっと。
卑劣なのはどちらかな?

おまえは「優」を「奴隷」と呼んでいるのは、
黒猫館館長の眼をかすめるため。

そうだ。
おまえはもうすでになんども「優」と寝ている。
おまえの本当の「夫」は黒猫館館長ではない。
「優」だ。

黒猫館館長よ。
自分の妻が「奴隷」となんども情事を重ねているj事実。
悔しいか?それとも悲しいのかな?
ふふふ。

しかし館長よ
お前は知らなかったわけではない。

ただ木造モルタル築四十年の物件のような、
あまりに脆い黒猫館の人間関係を維持するため
見てみぬふりをしていただけだ。

ふふ。
つらいものよのう?
「人格者」というやつは?

ふふ・・・ふぉーーーーふぉふぉふぉーーーー!!!

 

<黒猫館館長>

くらやみ男爵。・・・
なんという、、、
なんという悪魔なのだ?

お前はッ!! 

 

<くらやみ男爵>

ふふ・・・

観よ・・・ッ!! 

 

突然、「聖域」の天井部分に巨大なスクリーンが現れる。
そこに映写される影姫と優のあられもない痴態の数々。 

 

<影姫>

ぃ・・・・いやあーーーーーーーーツッッ!!! 

 

<光姫>

オネエ!!

落ち着きなさいッ!! 

 

 

<影姫>

許さない。
許さない。
くらやみ男爵。

貴方を・・・殺す・・・ッ!!

 

震影流破邪神技<影の舞>!!

 

しかしなにも起こらない。

 

<光姫>

オネエ!!
乱れた精神で呪文(スペル)を唱えても技を放つことはできません!!
精神を統一なさいッ!!

 

<くらやみ男爵>

ふふ・・・
ふぉーーーーーふぉふぉふぉーーーーー!!!

嵌ったな。
オルフェウスの巫女たちよ。

わたしがおまえたちを挑発し続けたのはおまえたちの憎悪のパワーを増大させるため。

そうだ。
おまえたちの憎悪のパワーは今、わたしの憎悪のパワーとぴったり一致している。
そこで・・・

これだッ!! 

 

「エレザールの鎌」を振りかざすくらやみ男爵。
「聖域」全体が小刻みに震動しはじめる。 

 

<くらやみ男爵>

「審判の日」はいまこそ到来せりッ!!

死と破壊と憎悪は今こそ勝利するッ!!

オルフェウスの巫女、光姫と影姫よ!

さあ・・・往けいッ!!
地獄へ!! 

 

無間冥界呪法高等奥義
「大葬儀」
<ΩΩΩ>
!!!

高速で回転するエレザールの鎌より多方向に発せられる黒い光。
聖域全体がどす黒く染められてゆく。
震動が激しさを増す。

その時、光姫と影姫の身体に異変が起こった。 

 

<光姫・影姫>

これは・・・いったいッ!?
身体が薄くなってゆく・・・
こんなことが・・・
こんなことがッ!!!! 

 

光姫と影姫の身体が蜃気楼のように薄くなってゆく。
最後は霞のようになり、しばらくすると完全に二人は消滅した。 

 

<くらやみ男爵>
 

地獄送還完了!!!

  

地球人類の盾たる「ふたりの戦士」
いま此処に消滅せり!!!