くらやみ男爵再誕

 

 

 

<三毛猫室長>

ふふふふふ・・・
ふぁふぁふぁふぁふぁああ・・・・
ふぁああああああああーーーーー!!!
んごおッ!!!

<光姫>

皆さん、危険です!!
三毛猫室長から離れてください!!
 

ふぁふぁふぁふぁ・・・・

<光姫>

この・・・
地獄の底から聞こえてくるような気味の悪い声は・・・

ふぉふぉふぉふぉふぉ・・・ 

<ハムちゃま>

あいつでちゅ!!
あの骸骨のお化けがまた来たんでちゅ!!
ハムちゃま怖いでちゅ!! 

ふぉふぉふぉふぉ・・・・・・ 

<黒猫館館長>

ついに復活したか。 

ふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉ・・・・・・・・ 

<浮世トミエ>

亭主の仇討たせてもらいます。

ふぉーーーーーーふぉふぉふぉーーーーーーーー!!! 

<影姫>

「審判の日」が始まる。 

 

三毛猫室長は笑い続けている。
と、突然笑いが止まった。

棒立ちになった三毛猫室長がガクガク震えだす。
それはあたかも重度パーキンソン病の患者の如く。

三毛猫室長の口が無表情にガツッと開かれる。
ゲボッ・・・と緑色の嘔吐物が溢れ出す。
その口腔の奥から聞き覚えのあるあの声が聞こえてきた。・・・ 

 

ふふふ・・・ふぉーーーーーふぉふぉふぉーーーーーーー!!

 

<くらやみ男爵>

ごきげんよう、諸君。
この三毛猫とかいう男を使った余興は楽しかったかな?

ふふ・・・
ふぉーーーーーふぉふぉふぉーーー・・・
だがもう遊びは終わりだ。
これから地獄が来るのだ。
お前たちの運命に。

ここにいる四人と1匹、
それぞれに最もふさわしい死・・・
それがこれから齎されるだろう。

さあ・・・おびえろ・・・
泣き喚け・・・
絶望の叫びをあげろ・・・

おっとその前のこの男を始末する。
沈みかかった船に乗っているほどわたしは馬鹿ではない。 

 

三毛猫室長の震えはさらに激しさを増す。
それはまるで暗黒舞踏のような気味の悪い死の舞踏であった。 

と、突然三毛猫室長の全身が火を吹いた。
火だるまになっても三毛猫室長は踊りを止めない。
黒い灰になりながらも踊りつづける。
腕がありえない方向に曲がる。
両足が膝の部分で折れる。
顔面から目玉が半熟卵のようにわき出てきて、ポトリと落ちる。・・・

 

「ぐえげげげげぎいいいいーーーーーーーー!!!」

 

三毛猫室長の最後の絶叫であった。
ボロボロの灰になった三毛猫室長の屍骸は雪崩のように崩れ落ちてピクリとも動かなくなった。 

 

<光姫>

なんという・・・
なんという無残な・・・!!

<影姫>

三毛猫室長。
貴方はもう苦痛から解放された。
死の安らぎに抱かれなさい。

<黒猫館館長>

許されん。
絶対にこんなことは許されん。
姿を現せ。
くらやみ男爵!! 

 

<くらやみ男爵>

お言葉の甘えてわたしの姿をみせてやろう・・・

 

(ぼぉぉわぁぁ〜ん)

これで結構かな。
黒猫館の諸君。

ところでわたしはさっきの三毛猫とかいう男の背中にくっついていたが、
「精神支配」などという大それたことはやっていない。

ただこの男の普段、抑圧している心の蓋をちょいと開けてみただけだ。
そうしたら出るわ出るわ。
憎悪。
悲憤。
妬み。
ルサンチマン。
激しい怒り。
恐怖。
自虐心。
死への憧憬。・・・

なんともまあ、いもずる式にあれもこれもと出てきたものじゃよ。・・・

そうしたらあの男がかってに動き出してさっきの浮世とかいう執事を刺殺した。

まあ人間などというものはだいたいこんなものじゃて!
いくら善人面していようが一皮向けば地獄の鬼より残虐な怪物となる。

そうだ。
黒猫館館長よ。
この男が言っていたな。
「あんたは偽善者だ」とな。

正にそのとおり。
お前とて一皮剥けばこの男と同様になる。

普段の人格者ぶりがかえって哀れなほどにな!

ふふ・・・・
ふぉーーーーーーふぉふぉふぉふぉーーーーーーー!!! 

 

<黒猫館館長>

確かにわたしは偽善者だ。

<光姫>

館長様、そんなことを言ってはいけません!!

<黒猫館館長>

しかし偽善でない善などこの世にあるのか?
くらやみ男爵よ。

歴史上の偉人と言われた数々の巨人たち。
彼らもまた日々、自分の偽善ぶりを悩み、それと格闘してきたのだ。

人間は完全な善人になることは絶対にできない。
それが人間の人間たる由縁だ。

しかし善に近づこうと努力することはできる。
その過程で人間は確かに「偽善者」だ。
しかし善に近づこうとする努力を止めて転落していく「悪人」より
「偽善者」のほうがはるかにましだ。

そうわたしは固く信じている。 

 

<くらやみ男爵>

ふふ・・・
ふぉーーーーーふぉふぉふぉーーーーー!!!

つまり人間は絶対に善と合致することができない。
そういうのだな?

なんという哀れな存在なのだ!!
人間とは・・・人間とはな!! 

 

<黒猫館館長>

正にそのとおりだ。
わたしは生涯かかっても完全な善人になることはできないだろう。

しかし人間であるならばそのことは宿命なのだ。
わたしはその宿命に従おう。

 

<くらやみ男爵>

ふふ・・・
ふぉーーーーーーーふぉふぉふぉふぉーーーーーーー!!!

もっともらしいごたくを並べおって。
まあ良い。

さてそろそろ始めるか。
「審判の日」。
今こそ、審判が下される。

憎悪と破壊と死が勝利するのだ。
宇宙が終わる・・・
永遠の闇が来る。

黒猫館守護神・オルフェウスよ。
よくみておくがいい。
お前の使徒たちが無残に踏みにじられるのを。

光姫と影姫よ。

オルフェウスの巫女たる「ふたりの戦士」よ。
よろしい。
ふたりまとめてかかってこい。

わたしはもう容赦はせんぞ。
全身全霊でお前たちふたりを惨殺する。
いかにおまえたちが無力な女であってもだ。

本気になったライオンがネズミを全力で食い殺すごとく。

 

さあ・・・こい・・・ッ!!

  

こいィーーーーーーイィィイ!!!