三毛猫室長の反逆

 

(三毛猫室長)

 

<三毛猫室長>

あ、、、ど〜〜〜も、ど〜〜〜〜も、みなさん、おひさしぶりっす。
こんな地下でモグラみたいにご苦労なことで。

<黒猫館館長>

三毛猫君!
一体いままでどこに居たんだ!?
ずいぶん探したぞ!!

<三毛猫室長>

あ、、、これはどうも、、偉大なる偉大なる館長様、ご無沙汰でした。
それにお集まりのみなさん、みなさん健やか〜な顔をしていらっしゃる!!

・・・ふふ・・・
ふぁああああーーーーーふぁふぁふぁふぁーーーーーー!!

<影姫>

どうやら正気ではないようですね。
三毛猫室長。

<光姫>

館長様!
皆さん!
危険です!!
三毛猫室長から離れてください!
三毛猫さまの体内から忌まわしい邪念が感じられます。
あるいはくらやみ男爵の精神支配を受けているのかもしれません。
危険です。
離れてください!!

<三毛猫室長>

なにをおっしゃる子猫ちゃん、、、じゃなかった光姫ちゃん。
ボクは極めて正気ですよ。
それに「くらやみ男爵」って誰です?
知らないなあ・・・

<浮世渡郎>

三毛猫ッ!!
とぼけるのもいい加減にせえや。
生死を賭けた決戦の場になにをのこのこでてきたんだッ!!
ええ!?
ぶちのめすぞ・・・ゴラァ!!

<三毛猫室長>

ああ〜〜〜〜〜
どうしてボクがこんな低学歴・低収入のクソオヤジにどなられなきゃいけないんでしょうかねえ。

<浮世渡郎>

なんだと!?
貴様、今なんといった!?

<浮世トミエ>

あんた!大人げないですよッ!!

<黒猫館館長>

全員静まれ!!
仲間割れしているほど我々に余裕はないぞ。

まず三毛猫君、君はどうしてこの場に今現れたのだ?
冷静に答えたまえ。

<三毛猫室長>

うう〜〜〜〜〜〜ん・・・そうだなあ、、、ボクの目的ねえ。。。
まあ、館長様、あなたの偉大さを誉めたたえに来たってトコロでしょうか?

<黒猫館館長>

皮肉は止めたまえ。
わたしの弟であるなら誠実に答えたまえ。
もう一度言う。

なにをしにここまで降りてきた?

<三毛猫室長>

うをう!!
偉大なる館長様にそこまで詰め寄られたら言うしかないようですね。

館長様、、、はっきり言ってあなたは偽善者ですね。

<黒猫館館長>

なんだと?
なにがいいたい?

<三毛猫室長>

館長様、あなたはいつも優等生でしたよ。
それこそ幼稚園の頃からね。

成績はいつもクラスで一番。
運動神経も抜群。

女子にはもてもて。

ああ〜〜うらやましいなあ〜〜〜。


でもね。
館長様。
ボクにはわかるんですよ。

そうやって自分の優等生ぶりをボクに見せ付けてあなたはいつもほくそえんでいた。
ボクという弟を蔑むことがあなたの生きがいだったんですよ。

館長様、あなたがベルリン大学から博士号を貰った時。
お美しい影姫さまと結婚なさった時。
そして黒猫館の館長職に収まった時。

ボクはいつも笑顔であなたに向かって拍手していましたよ。
笑顔の下ではあなたに対する嫌悪感を剥き出しにしてね。

ボクがイタリアに旅立ったのもあなたに対する嫌悪感からでた行為だったんですよ。
あなたはその時、思ったはずだ。
「これで出来の悪い弟の厄介払いができた」とね。

そしてこの就職難の北風に煽られてボクがあなたの黒猫館に戻ってきた時、
あなたはきっとこう思ったはずだ。

「放蕩息子の帰還」・・・とね。

<影姫>

三毛猫室長。
いいかげんになさい。
これ以上毒を吐くならばわたしが許しませんよ。

<三毛猫室長>

をを〜〜〜。
怖い怖い影姫さまあ、、、
申し訳ございません。

ところで館長様、これ以上兄弟でいがみあうのは止めにしませんか?

<黒猫館館長>

?・・・

<三毛猫室長>

こいつでね!!

(突然ナイフを胸ポケットから取り出す三毛猫室長)
まさしく激怒した猫のごとく黒猫館館長に襲いかかった。)

 

<浮世渡郎>

あぶねえ!!館長様!!!
 

 

 

どすっ

 

 

 

(なにか気味の悪い音が聖域に響く
そして流れ始める血糊。) 

 

 

<黒猫館館長>

浮世君!!

<影姫>

浮世!!

<光姫>

浮世さまッ!!

<ハムちゃま>

ウッキーちゃま!!








<浮世トミエ>
 

あ、、、あんたーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!

 

(三毛猫室長のナイフが浮世渡郎の下腹部に食い込んでいた。
たちまち崩れ落ちる浮世渡郎)

 

<浮世トミエ>

あんたッ、、、なんてばかなことをッ!!

<黒猫館館長>

トミエさん、落ち着け!!
光姫、お前の霊力で傷を塞ぐことはできぬか!?

<光姫>

館長様、、、
ダメです。。。
傷が深すぎます。

<影姫>

なんということを・・・

<ハムちゃま>

ウッキーちゃまににゃんてことを!!

<浮世渡郎>

いいんだ、、、これで、これでいいんだ。。。

<黒猫館館長>

よくはないッ!!
ここで君が死んだらトミエさんはどうなる!?
生きるんだッ!!
生きぬけッ!!

<浮世渡郎>

館長様・・・
渡郎、、、
最期の最期で男になることができやした。

人生が怖くて逃げ回ってきた負け犬が最期にこの人生って奴ガブリと一口噛み付いてやったんでござんす。
これ以上の幸せはございませんぜ・・・

<浮世トミエ>

あんた・・・ッ、、、
死んだら・・・
死んだら承知しないよッ。。。

<浮世渡郎>

トミエ。
最期の最期まで苦労をかさねっぱなしですまぬ・・・

でもトミエのおかげで俺の人生も楽しいものになった。

覚えているか・・・?

仙台の学生時代。
青葉城の伊達政宗像の前が俺たちのいつもの待ち合わせ場所だったな。

八木山のベニーランドのジェットコースターは怖かったなあ。・・・

仙台駅前の「香澄」っていう喫茶店で何時間も話し込んだな。。。

あの頃が一番楽しい時期だったぜ。。。

だが、、、もう俺の人生もそろそろ終わりのようだ、、、

<浮世トミエ>

あんたッ!!このまま死んだらカッコよすぎてあんたには似合わないよッ!!

<浮世渡郎>

そうだな、、、
俺には身に余る花道だ。
こんな最期は俺にはもったいねえぜ。・・・

館長様。

浮世渡郎、黒猫館の執事として最後の任務をはたしました。

光姫さん。
今後はあなたが館長様を守ってくれ。

ああ、いい気持だ。。。
あんまり気持が良すぎてなんだか眠くなってきやがったぜ。

トミエ。
おまえは絶対、この漆黒の地下迷宮から生きのびて明るい地上に帰るんだぞ。

じゃあ、
そろそろ、
俺は寝るぜ。。。

 

(ゆっくりと眼を閉じる浮世渡郎。
そして無言で立ち尽くす4人と1匹。) 

  

黒猫館執事・浮世渡郎、地下十二階「聖域」にて黒猫館館長をかばって殉職。享年42歳。