人間の約束

  

 

<黒猫館館長>

光姫よ、くらやみ男爵の現在位置は?

<光姫>

はい。
館長様。
この真下、つまり地下十二階「聖域」から邪悪な波動を感じます。

<黒猫館館長>

くらやみ男爵は聖域で一体なにを・・・?

<光姫>

では館長様、オネエ。
光姫、参ります。

<影姫>

お待ちなさい。

<光姫>

オネエ・・・

<影姫>

わたしたち双子の姉妹は生まれた時も一緒なら死ぬ時も一緒。
わたしたちがまだ「東京」の「世田谷」の小さな家で暮らしていた頃。
そう誓ったことがあったわね。
覚えている?
あのうちの近くにあった「砧(きぬた)公園」の大きな樹の下で。

<光姫>

でもオネエを連れてゆくわけには・・・

<黒猫館館長>

わたしも聖域に降りよう。

<光姫・影姫>

いけません!館長様!貴方!

<黒猫館館長>

なにを言っておる?
わたしが還暦を過ぎた老人だから行くなと言いたいのかな?

光姫、影姫よ。
わたしたちは決して死にに行くのではない。
いやむしろ生きるためにくらやみ男爵に立ち向かうのだ。

<光姫>

館長様・・・?

<黒猫館館長>

確かにくらやみ男爵は人間にとってあまりに強大な敵だ。
しかしそれではだまって彼のいうとおり人間は滅べばいいというのだろうか?

答えは<否>だ。
断じて<否>だ。

そのような不条理な暴虐に立ち向かうことこそ黒猫館の使命。
我々黒猫館住人は地球人類の盾となって大いなる邪悪と闘わねばならない。

<影姫>

同感ですわ。貴方。

<黒猫館館長>

光姫よ。
わたしは眠れぬ夜にふと思う時がある。
なぜ人間はいままで滅ばなかったのだろうか?と・・・

流血・暴虐の血塗られた歴史。
それが人類の歴史だったとペシミストどもは言うだろう。
しかしそれだけだったら人間はとうに滅んでいたはずだ。

わたしは思うのだ。
人間には生きる「権利」と「義務」があると。
生きることで人は幸福を勝ち取ることができる。
これが人間の「権利」だ。

しかしその「権利」を行使するためには生きるということの「義務」も果たさねばならない。
人間は「生きなければならない」。
どんな困難・強大な敵が現れようと。

人間が捨ての一手で生きようとして懸命になる時、
一瞬だけ「奇跡」は起こる。
自分では信じられない力が出せる。

そのような「奇跡」によって人間は滅亡を免れてきたのではなかろうか?
そうわたしは固く信じている。

<影姫>

では起こしましょう。
貴方。
その「奇跡」とやらを。

<光姫>

館長様、なぜ前回の戦いでわたしの攻撃がくらやみ男爵に全く通用しなかったのか?
その答がぼんやりと見えてきた気がします。

<黒猫館館長>

解ってくれたか。
光姫よ。・・・

<ハムちゃま>

ハムちゃまを忘れちゃいや〜〜〜〜んでちゅ!!

<光姫>

ハムちゃま!!
生きていたのね!!

<ハムちゃま>

仮面ライダーは毎週戦うでちゅ!!!
だからハムちゃまも毎週戦うでちゅ!!!

<浮世渡郎>

えええ〜〜〜と、、、あっしたちも忘れてもらっちゃいやでござんすな・・・

<黒猫館館長>

浮世夫妻。
君たちまで来てくれたのか?

<浮世トミエ>

この人がどうしてもっていうからわたしも着いてきました。
あんた、なに張り切ってるのよ!?

<浮世渡郎>

あっしたちだって黒猫館住人の一員ですぜ。
館長様。
だまって地上で寝てられますかい?

それに・・・

<影姫>

「それに」・・・なんです?
浮世。

<浮世渡郎>

イヤ、奥様、スンマセン!!
あっしだってやる時はやるんでござんすよ。

若い時から半端者として逃げ回ってきた負け犬人生。
それをここらで終わらせたいんでござんす。
黒猫館のために戦わせてくだせえ!!
渡郎を男にしておくんなせえ!!
館長様!
奥様!

<黒猫館館長>

はっきり言ってこの下の階に降りれば死ぬかもしれんのだぞ。
浮世君。
覚悟はあるのか?

<浮世渡郎>

死んだって本望でござんす。
もともと館長様に拾われなければ死んでいたこの命、そっくり館長様にお預けします。

<黒猫館館長>

トミエさん。
あなたはどうする?

<浮世トミエ>

この人、わたしがいないとてんで駄目なんですよ。
だからわたしも下に降ります。

<影姫>

では決まったようですね。
5人と1匹。
これから地下十二階「聖域」に降ります。

後悔はないですね。
みなさん。

<浮世渡郎>

待ってました!!
もちろん後悔なんてしねえでござんす!!

<浮世トミエ>

浮世の妻としてこの人に付いていきます。

<ハムちゃま>

いよいよ正義が勝つんでちゅね!!!

<黒猫館館長>

わたしが先頭に立とう。
そして光姫よ。
おまえがこのパーティのリーダーだ。
頼むぞ。

<光姫>

館長様。
光姫、今、本当に大事なものはなにかわかりました。
その大事なものがこれから始まる最終決戦でわたしたちを見えない大きな力となって助けることになるでしょう。

<黒猫館館長>

光姫・・・
成長したな。
もう子供扱いはできぬな。

<影姫>

では降りますよ。
あそこに壊れた階段があります。
みなさん、注意して。