霊安室

(地下十一階)

 

 

 

<影姫>

ハッ!此処は!?

<光姫>

館長様、どうしてここに!?

<黒猫館館長>

どうしてもこうしてもあるまい。
わたしはこの下の階にある「聖域」でおまえ達の無事を祈っていた。
すると突然震動音が聞こえたので、この階まで上がってみたらおまえ達がのびているではないか?
ところで光姫、くらやみ男爵の力はどの程度か?

<光姫>

わたしの霊力を持ってしても全く歯が立たない相手です。
くらやみ男爵の持つ「闇の力」はいままで地球上に存在した黒魔術系統の魔術とは全く異質なものを感じます。
くらやみ男爵を消滅させるにはとてもわたしひとりの力では不可能な気がします。

<黒猫館館長>

くらやみ男爵は地球人ではない、というのだな。
すると彼は異星人か?

<光姫>

いいえ、館長様、くらやみ男爵には「生きている」という実感がないのです。
まるで幽霊と戦っているような・・・

<黒猫館館長>

やっかいな相手だ。
しかしわれわれはなんとしてもくらやみ男爵をこの地下迷宮で消滅させねばならない。
このわたしの代でくらやみ男爵を消滅させることができなければ黒猫館に未来はない。
光姫、・・・おまえだけが頼りだ。
頼むぞ。

<光姫>

いいえ、わたしが勝つにはオネエの力も必要かと・・・

<黒猫館館長>

なに?影姫、どういうことだ?
おまえもまた<光の力>を持つ者なのか?

<影姫>

そのことを語るにはこの場所は適切ではありません。
この下の「聖域」ですべてが明らかになることでしょう。

<光姫>
この下が「聖域」・・・するとそこで黒猫館のすべての秘密が解き明かされるわけですね。

<影姫>

貴方、そろそろ話してください。「黒猫館の秘密」。
それをしらないとわたしたちは正々堂々とくらやみ男爵に立ち向かえない気がします。

<黒猫館館長>

ウム。
潮時だな。
本来ならば黒猫館の最高機密は守護神様から館長職にあるものだけに伝達される。
しかし今や、黒猫館のみならず全地球がくらやみ男爵の脅威にさらされている。
そろそろ話さねばなるまい。
「黒猫館の秘密」。

<影姫>

ところでこの階はなにやら気味の悪い階ですね。
これはミイラですか?

<黒猫館館長>

馬鹿者ッ!!
館長夫人であっても今の言葉は厳罰にあたいする失言だぞ。
反省しろッ!!

<影姫>

わかりました。

<黒猫館館長>

此処は代々黒猫館館長の遺体が収めてある霊安室だ。

此処には
15世紀のヤン・フス。
16世紀のジョルダーノ・ブルーノ。
17世紀のバルーフ・スピノザも眠っておられる。

彼らもまた「黒猫館館長」だった時期があるのだ。

<光姫>

スピノザというと『エチカ』で高名な哲学者のスピノザですか?

<黒猫館館長>

そうだ。
かれもまた不遇な男だった。
しかしそのような運命でなければ館長職に就くことはできなかっただろう。 

<影姫>

ではそろそろ話してくださりますか?
「黒猫館の秘密」

<黒猫館館長>

良いだろう。
一度しか話さん。
  良く聞いておくのだ。