「列島」

 戦前の左翼詩の流れを汲むグループ。しかし「列島」ではそうした階級的イデオロギーを芸術的に昇華することに重点が置かれた。いわば左翼的イデオロギーの芸術的表現がこのグループの特徴である。芸術的な方法意識の上に立ってエネルギッシュな前衛詩運動をさまざまに展開していった。

 

 

◆「列島」同人詩書図録◆

 

沙漠(砂漠)の木 関根弘
パウロウの鶴 長谷川龍生
菅原克巳
NEW六月のみどりの夜わ 安東次男
不安と遊撃 黒田喜夫

 

 

 

長谷川龍生

 1928年大阪出身。少年時代から小野十三郎に師事し、その影響を受ける。早稲田大学仏文科中退。「列島」「山河」「現代詩の会」などに所属。その詩的特徴は自己の意識深層に宿る怪奇な幻想を客観的・即物的に記録することにあり、一種のシュールリアリズムと言ってよいものである。

 

『パウロウの鶴』

   

第一詩集。書肆ユリイカ発行。函完本。初版1957年6月20日。函きりえ伊達得夫

 かなり出にくいが根気よく探せば出る可能性はある。古書価は18000円前後から上。それでもユリイカ刊詩集のなかでは入手しやすい部類に入る。

 

 

『虎』

 第二詩集。飯塚書店発行。カバー完本。初版1960年7月15日。出やすい。3ヶ月も探せば入手できるだろう。飯塚書店版現代詩集のなかでも入手しやすい本に入る。

 

 

黒田喜夫

 1926年山形県出身。小学校卒業後、ロシア文学・プロレタリア文学に触れる。敗戦後は帰郷して農作業に従事、肺疾患を患う。『列島』『現代詩の会』に参加。グロテスクなイメージに充ちた革命のビジョンを執拗に描く異色詩人。『不安と遊撃』でH氏賞受賞。

『不安と遊撃』

 第一詩集。飯塚書店発行。カバ完本。初版1959年12月25日。極めて出やすい。詩集を買ってみようかと思っている初心者の方にお薦めの詩集である。古書価は8000円前後。H氏賞受賞詩集。

 

 

 

菅原克巳

 1911年宮城県出身。私立日本美術学校中退。戦前は『詩行動』に参加、非合法革命運動に参加する。戦後は『コスモス』『列島』『現代詩の会』などに参加。その詩風は民衆への善意と愛を爽やかで明快に語る抒情詩である。その暖かいヒューマニズムは今日の私たちの胸を打ち続ける。

  

『手』

   

第一詩集。木馬社発行。函完本。初版1951年12月。

 この本は意外と出ない。入手はかなり困難な本である。しかし仮に出たら5000円前後で入手可能。根気で探しましょう。

 

 

 井上俊夫 

  1922年大阪生。戦後は『列島』『山河』に参加。日本農民文学会員。詩集以外に『農村で詩を書こうとする人へ』などの著作もある。「列島」唯一の農民詩人。古来より虐げられてきた日本の農民の鬱屈した心情を粘着質の文体で語ることにこの詩人の特色がある。その呪詛にも似た詩群は、日本史の暗部に埋もれた「農民」という名の虐げられた者たちの怨念の叫びを現代に再生させる。『野にかかる虹』でH氏賞受賞。

『野にかかる虹』

 

第一詩集。三一書房発行。カバー完本。初版1956年10月30日。

 非常によく出る詩集である。たやすく入手可能だがこの本は古書価が高い。完本なら2〜3万は覚悟しなければならない。また状態の良い本も少ない。H氏賞受賞。

 

 

 

(黒猫館&黒猫館館長)