パラフィン紙のかけ方
(2017年10月11日(水))
古書を一冊、購(あがな)う。
さてどうするか。
普通の人ならまず「読む」これがくるだろう。
しかし古書コレクターは違う。
「読む」前にまず重要なことがある。
それが「パラフィン紙をかける」という作業である。
さて「パラフィン紙」とは何か?
それが第一の問題である。
それを辞書風に答えるならば「パラフィン紙とは漉き段階で充分に叩解(こうかい)したパルプを原料とした、高密、透明性の高い紙である。」と答えることができる。
しかしこんな答では一般の人はなにがなんだかわからないであろう。
故にもっとわかり易く解説する。
パラフィン紙とは昔の岩波文庫についていた半透明の紙である。
こういえばわかる人が沢山いると思う。
さらにわからない人にはこう説明する。
文学全集の本本体(ほん・ほんたい)に巻かれている半透明の紙である。
これで85%の人がわかってくれると思う。
さて「パラフィン紙をかける」とは一体なんのためにすることなのであろうか?
端的に言って、その第一義は「古書の保護」である。
古書本体を函(はこ)に入れるときに「擦れ」が生じて古書にイタミが生じる場合がある。
これをまず防止する。
しかし函のない本にパラフィン紙をかける場合のほうが現代では多いことであろう。
その場合は「カバー&帯の保護」が目的である。
パラフィン紙をかけることでカバー&帯の微妙なスレ&ヤブレを防止する。
特に「帯」は非常にイタミやすい物である。
「帯」を非常に重視する古書コレクターはパラフィン紙を古書にかけることがじぶんの義務となる。
さらにパラフィン紙にはワックス加工(蝋引き加工)がしてあるので古書に多様なバリア性が生じる。
パラフィン紙をかけることで、防湿効果&耐水効果&対油効果が得られる。
古書の一番の敵は湿気(このことについてはまた後で詳述する。)と言われるほど、古書コレクターを恐怖せしめる「湿気」であるがパラフィン紙をかけることで「湿気」からある程度古書を守ることができる。
「うっかり水を本にかけてしまった」こういう人がたまにいるが、パラフィン紙をかけてあれば「水」の脅威からある程度古書を守ることができる。
このように素晴らしいほどの古書に対する保護効果がある「パラフィン紙」であるが、古書コレクターは実は「古書の保護」だけでパラフィン紙をかけるのではない。
パラフィン紙をかけるとじぶんの古書がなんとなく高級になった感じがするのである。
これは実は非常に多くの古書コレクターが証言していることである。
普通一般の人はこんなことを聞いても「そんなのは錯覚だろ」と思うであろう。
しかし錯覚でも良い。
古書コレクターは1ミリでもじぶんの古書を「高級にしたい」のである。
なんとなく古めかしく、ずっしりとした、重々しい感じ、そういう感じがパラフィン紙をかけることで古書に付与される。
まさにパラフィン紙とはじぶんの古書を「高級にしてくれる」魔法の紙なのである。
さあ、これからわたしはじぶんの古書にパラフィン紙をかける作業に没頭することにしよう。
普通の人には面倒にしか感じられない作業かもしれないが、古書コレクターにはパラフィン紙をいそいそとじぶんの古書にかけている時間は何事にも換えがたい至福の時間なのである。
(了&合掌&南無阿弥陀佛)
(黒猫館&黒猫館館長)