『怪異やみらみっちゃ』
富永隆一著。森開社発行。初版1975年3月10日限定500部。折込表紙・筒箱完本。表紙装画・口絵=著者。定価1500円。
「内容」
「序文・天才への招待 金石稔」
「飛行幻想」
「笑殺する火焔について」
「現の夜は頭脳に太古を響かせた」
「蛾」
「埴輪」
「声」
「驟雨」
「石榴」
「時計人間」
「著者覚え書」
本書は数ある森開社発行の書物の中でもとりわけ謎めいた書物である。
わたしも最近まで本書についての詳細をほとんど知らなかった。恐らく森開社コレクターの間でもほとんど知名度がない本が本書であるのだろう。
まず第一の謎は著者の「富永隆一」なる人物がいったいどのような人物であったのか、今となっては全く判別できないことである。
第二の謎は本書の内容が「怪異」=「超常現象」に関する極めて猟奇的な事項が淡々とに綴られているだけで、一体本書は「詩集」なのか「短編小説集」なのかそのとも別の何かなのか、わたしにもさっぱりわからないのである。
「やみらみっちゃ」という言葉の真意も全く不明である。
第三の謎は本書の「筒箱」の有無である。
かなり前であるがわたしは某古書目録で本書の「筒箱付き」という表示を見たことがある。
しかしその後、本書が目録に出てくるたびに「筒箱」の表示を見たことはない。
恐らく「筒箱」というより「うすっぺらな袋」のようなものが発売当時には本書に付属していたものと推測される。
しかし今となってはそのような「袋つき」を手に取ることはほとんど不可能なようだ。
恐らく本書が10冊あったら袋がついているのは2〜3冊であろう。森開社コレクターの方々も本書の「袋」には拘らないほうが無難である。
最後に古書価であるがこれがまるっきり定まっていないらしい。
1000円で入手できることもあれば、古書店主が面白がって2〜3万つける場合もあるらしい。
まさに本書は「骨の髄まで」森開社の本を揃えたいと思っている真のマニア向けの書物である。
気を長くもってじっくり心して本書を探してほしいと思う。
安く発掘するのが全く不可能な本ではないだけに、できるだけコレクターの方々には今のうちになるべく安く本書を入手してもらいたいものである。
(黒猫館&黒猫館館長)