【中東紀行 76】さらばトルコよ

  

 

 出国手続き窓口への行列に並んでいたわたしは行列の横の人だかりにオキアイさんを見つけると、すかさず行列から躍り出た。

 オキアイさんの前に立つと彼はガッシリとした両手を差し出してくる。
 わたしも両手を差し出す。

 わたし「ありがとう!」
 オキアイさん「ありがとう!」

 なぜか二人の口から「さようなら」という声は出なかった。そんな言葉が出る雰囲気もまったくなかった。なぜなら不思議な再会の予感があったからだ。

 オキアイさんは名刺を差し出した。
 「オキアイ・メムジェルオクタイ」・・・これがオキアイさんのフルネームであった。名刺を持たない主義のわたしは自分のフルネームを告げた。

 そしてもう一度、お互いに肩を叩きあってからわたしは行列に戻った。オキアイさんはいつまでも手を振っている。わたしは手を振りながら出国窓口へと入った。

 こうして一人の日本人と一人のトルコ人は別れた。友情・・・さよう、そのときわたしとオキアイさんの間には確かに友情が芽生えた。人種や国籍を超えた奇跡的な友情。そういったものをわたしはしっかりと自分の胸に確認した。

 出国窓口でパスポートを出す。
 出国検査でゲートをくぐる。
 
 その間もわたしは考えていた。
 またいつか来る。必ず来る。
 このすばらしい神秘の国、トルコへ!

 やがて飛行機への搭乗口が開かれる。飛行機への搭乗が始まってゆく。ツアー一行が飛行機に入るとトルコ人スチュワーデスが笑顔で迎えてくれた。

 スチュワーデス「こんにちは〜!!」

 「こ、こんにちは・・・」わたしははにかみながらスチュワーデスに答えると自分の席に座ってシートベルトをつけた。

 やがてトルコ航空が動き出す。除除に早まってゆく飛行機の速度を感じながら、わたしは窓から最後のトルコの風景を見た。
 夕暮れ時。滑走路の向こうに森林風景が見える。
 やがてトルコ航空機がゆっくりと上昇し始める。
 わたしは窓から目を離し。ゆっくりと目をつぶった。

 「すべて良し!」

 こうしてわたしは帰国の途についた。さらばトルコ。そしていつの日かまた、トルコ!

                           (続く)


(デジカメの容量がオーバーしたので写真はなし)

 

 

 

 (黒猫館&黒猫館館長)