【中東紀行 73】最後のトルコ料理 

 

 空港のスーパーマーケットの前にトルコ料理レストランがある。わたしと斉藤さんと今野さんはふらふらと昼食を採るためレストランに入って奥のほうの席に腰掛けた。

 わたしはおずおずと遠慮がちに言った。
 「パスタでいいです・・・」
 それを聞いた斉藤さんが答える。
 「貴方、若いんだからパスタなんかじゃお腹減るでしょ?ほらそのケバブ注文しなさい。」

 メニューにはシシ・ケバブ(羊肉の串焼き・通称「シシカバブー」)とドネル・ケバブ(羊肉の回転焼き)が載っている。わたしは斉藤さんのお言葉に甘えてドネル・ケバブのハンバーガーを注文することにした。
 なぜならシシ・ケバブはイスタンブール一日目の夕食で食べているからだ。
 斉藤さんと今野さんはパスタで良いそうである。70歳を超えると脂っこいものが苦手になるのだそうである。

 やがてドネル・ケバブのハンバーガーが運ばれてくる。
 これは凄い!!日本のモスバーガーの3倍ぐらいのボリュームのあるハンバーガーである。トルコ人は日常茶飯事にこんなケバブを食べているのだ。でかくなるのも不思議はない。

 「ガブッ・・・」とハンバーガーに喰らいつく。肉汁が湧き出る。シコシコとした食感。日本の鶏肉料理にも似た味わい・・・

 旨い。

 夢中でガツガツと食べているとアッという間になくなってしまった。なんて旨いんだ。しかしまた太っちゃうなあ、困るなあ・・・

 斉藤さんと今野さんはまだパスタを食べている。
 わたしが水を飲んでいると斉藤さんが口を開いた。「トルコ、良い国だったわね。」
 今野さんが応答する。「わたしはあんなことになっちゃったけど、ヨーロッパよりトルコのほうが良かった気がするわ。」

 わたしもなんか言わなくてはならない。
 「ええと・・・食べ物の美味しい国は良い国です。はい。」

 斉藤さんと今野さんがほがらかに談笑した。わたしも笑った。しかしこのトリオも今日で終わりなんだな。

 一抹の寂しさを覚えながら、全員の会計を斉藤さんが済ませると3人はツアー一行の待つ集合場所へ向かった。


(もうデジカメの容量がいっぱいになったので写真はなし)

 

 (黒猫館&黒猫館館長)