【中東紀行 70】今野さん、帰還
バスがイスタンブール市街をのろのろと往く。
「ぼす・・・ぼす・・・しゅぼぼぼ・・・」なんだか哀れな音をたてながらトルコのバスは進んでゆくのであった。
やがてバスはイスタンブール歴史地区を抜けて新市外へ、そしてボスポラス海峡沿岸に辿りついた。ここからツアー一行は小型客船に乗り換える。
ツアー最後の観光、「ボスポラス海峡クルーズ」が始まるのだ。
この小型客船は本日の夕方、日本に向かってフライトする予定のアタチュルク空港近郊まで行く。
ツアー一行がどやどやとバスから小型客船に乗り換える。客船内部に入った時、意外な人物を発見した。今野さんである。
今野さん「いや〜、、、お久しぶり・・・(苦笑)」
斎藤さん「貴方、もう大丈夫なの!?」
斎藤さんと今野さんのコンビ復活である。ここからわたしも入れて斎藤さん、今野さん、わたし、の三人で行動を共にすることになる。
今野さんが落ち着いた口調で言う。「ここじゃなんだから甲板まで出ましょうか?」
・・・そして船の甲板。中近東の乾燥した風を全身に受けながら、斎藤さんと今野さんとわたしは甲板に設置してある椅子に腰掛けた。
斎藤さんが言う。
斎藤さん「すばらしい旅になったわ。でも貴方は災難だったわよね。」
今野さん「わたし、カッパドキアまではすばらしい旅行だったと思うわ。しかしその後のことを考えると・・・もう海外旅行には来ないと思うの。」
なるほど。
人生色々、人それぞれ、わたしと斎藤さんは今回の旅行をすばらしいものと思っているのだが、今野さんにとっては最悪の体験となってしまったわけだな。・・・
場の雰囲気が暗くなったので今野さんが弁解するように言う。
今野さん「でも保険に入っていて本当に良かったわ〜、外国人向けの超高級病院に入院できたんだもの。」
(トルコでは国民全員が病院に無料でかかることができる。それゆえトルコ国民にとっては医療費に対する不安は存在しない。ごく一部の大富豪や外国人が無料の病院より一クラス上の有料の病院にかかる。外国人は旅行保険に入っている場合、有料の病院でも無料になる。)
旅の終わりの寂寥感を漂わせながら、ツアー一行を乗せた小型客船はアタチュルク空港に向かって突き進んでゆく。・・・
(上の画像はボスポラス海峡沿岸)
(黒猫館&黒猫館館長)