【中東紀行 67】宴、クライマックスへ 

 

 再び赤いライトがステージを照らす。
 「どどどど、どんどんどんどん・・・・」激しく打楽器が打ち鳴らされる。

 その瞬間いきなり真っ白なコスチュームのダンサーが奥から躍り出てきた。間違いない。これがアテナだ。
 客席がおおッ!とどよめく。


 


 これは凄い。アテナはくねくねとタコのように身体をくれらせたかと思うといきなり激しいダンスに入った。その迫力たるや、一人目と二人目のダンサーの比ではない。

 まさにアテナこそ本日の夜会の主役であり、一人目と二人目は前座だったのである。
 フラッシュが次々に焚かれる。日本人もロシア人も韓国人もみなアテナの踊りに見入っている。


 


 ぼんやり観ていたわたしの前にいきなりワイングラスがポンと置かれた。ツアー一行全員に白ワインが注がれてゆく。ん・・・なんだ!?と思ったら、テーブルの一番端に座っていた河野さんが立ち上がった。河野さんはエフェソスで買った革ジャンバーとピッタリしたジーンズにハイヒール、その姿は背後で激しく踊るアテナの姿と不思議に重なった。

 河野さん「良かったらワインお飲みになってください。」河野さんがワイングラスをかかげる。ツアー全員はみな驚愕した。なんと河野さんはツアー一行全員にワインを振舞ったのだ。
 河野さんに対して良い感情を抱いていなかったおばさん連中もこれには参ったらしい。ツアー一行の拍手がまばらに起こり、やがてそれは大きな波となって河野さんに向かってとめどもなく浴びせられてゆく。

 わたしは河野さんが振舞ったワインを飲み込んだ。ゴクリ・・意外と強いワインだ。不思議な酩酊感がわたしを襲う。
 アテナの踊りはさらに激しさを増してゆく。

 次々に焚かれるフラッシュにめまいを感じながら、わたしはショーのクライマックスを感じていた。またそれはこの10日間のトルコ周遊旅行のクライマックスでもあるかのように。


(画像は2枚ともアテナ)

 

 

 (黒猫館&黒猫館館長)