『元気やでっ!』
原案=土屋守・脚本=次原隆二・作画=山本純二。集英社ジャンプコミックス発行。カバー完本。1996年1月15日初版発行。(注意!重版も存在します。)全一巻。
昨今はかなり沈静化したようであるが、1980年代後半から1990年代前半にかけて、日本全国の小学校・中学校で吹き荒れた「いじめ」の凄まじさは記憶に新しい。
いじめによる自殺者が一年に何人も出たのもこの時期である。
そんな時期に「いじめ」に対する問題提起を主眼とする目的で、少年向け娯楽漫画専門雑誌である『週間少年ジャンプ』で連載された漫画が本書である。
この当時も現在もそうであるが、娯楽漫画雑誌で本漫画のような社会派漫画が連載されることは異例であり、また衝撃であった。もちろんその分、反発も強く筆者の周りではこの漫画に対する「ダサい」という誹謗が囁かれたことも記憶している。
筆者はそのような抵抗を廃して、あえてこのような社会派漫画を『週間少年ジャンプ』に掲載した当時のジャンプ編集部の各氏に敬意を表したい。
さて本書は原案である土屋守の娘のいじめ実体験を基に構成されている。
凄まじい「いじめ」の現場において担任の教師が悪役として描かれていたり、教育実習生がいじめられっ子の生徒のために孤軍奮闘の活躍を見せたりと、漫画的誇張がやや目立つが、全体としてみれば十分にリアルな「いじめ」漫画として成立していることを筆者は評価したい。なにより特筆すべきものは主人公の少女が「いじめ」に対して「泣き寝入り」を決め込むのではなく「清々堂々と立ち向かう」様子が描かれていることであろう。
本書を読んで、現在の全国のいじめられっ子諸君が勇気を得ることができたなら、この漫画のファンであるわたしとしてもそれ以上の喜びはない。
さて本書は昨今、ブックオフ的古書店から急激に姿を消しつつあるので欲しい人は早めに買ったほうが良い。ネットのよる古書通信販売では2000円以上つける場合もあるようだ。
「いじめ」に対する問題提起を真摯に行った「時代の生き証人」」とも言える傑作社会派漫画である。
(黒猫館&黒猫館館長)