【中東紀行 58】ロクム 

 

 

 

 

 わたしと斎藤さんはいよいよ正門からグランドバザールへ入場した。

 「うわー・・・」とわたしは思わず唸った。
 とにかく凄い人、人、人の波である。これではスリが出没するのも無理はないな。
 わたしはそう確信するとカバンを首からぶら下げてカバンのファスナーを指で押さえた。こうするとまずスリの被害には合わない。
 この方法でかってわたしはローマやプラハといった危険地帯をくぐりぬけてきた。今度もガッチリ守ってやるぜ!自分の財産をな。

 もちろん斎藤さんからは目を離さない。
 お年寄りの海外での一人歩きがどれほど危険かは行ってみなくてはわからないだろう。


 さてぼちぼち店に目をこらすと、あるわ、あるわ、本当になんでもある。奇妙な人形やらベリーダンスの衣装やら大小の目玉(魔除け)やらが店先にぶらさがっている。

 ふと、わたしの目に飛び込んできたものがある。
 ロクムである。
 ご存知ない方のために説明するとロクムとは15世紀から存在しているトルコの代表的なお菓子でデンプンに砂糖とナッツを混ぜてつくるものだ。
 その味はちょっと京都の高級菓子に似ている上品なものである。
 童話作家のC・S・ルイスの『ライオンと魔女』にもロクムが登場している。

 店頭で試食してみる。もぐもぐ・・・申し分ない。これは高級なロクムだな。店主に値段を聞くと「一箱5トルコリラ」との返事が返ってきた。安い・・・

 ふとみると斎藤さんがなんと10箱もロクムを買っている。そんなにわたしはいらない。家族と親戚用に3箱買った。15トルコリラ。

 のっけから良いものを安く買ってしまった。
 わたしと斎藤さんは次の物品を求めてグランドバザールの奥へと進んでゆく。

(写真はトルコの代表的なお菓子、ロクム)

 

(黒猫館&黒猫館館長)