電話が恐い

 

(2011年8月19日)

 

 

 

 恐い。
 電話が恐い。

 深夜。
 午前3時30分。
 物音ひとつせぬ真夜中、突然腹を揺すって鳴り出す電話。
 わたしは電話にでる。
 「プスッ・・・」無機質な音を立てて電話が切られる。



    ※      ※      ※



 1998年。
 わたしは東京のマンションでひとリ暮らしをしていた。その時に悩まされたのが、この「悪戯電話」だ。通常の生活をしている者であれば考えられない時間に突然鳴り出す白い電話。
 その呼出音が闇と静寂を切り裂いた時のショック!
 それが毎夜のように続くのだ。
 わたしはこの「悪戯電話」が原因で精神に変調をきたし始めていた。

 その時期に作った短歌にこういうものがある。

 ・鳴るたびに 惨の予感を伝えつつ われを狂わす 電話一台
 ・ふいに鳴る 真夜(まよ)の電話に 出てみれば おさなきわれの 鳴き声がする

 日本製ホラー映画「着信アリ」は自分自身から電話がかかってくる怪異譚であった。もしかしたら1998年の真夜中の電話は幼年のわたしが大人のわたしに助けを求めてかけてきたものではなかったのか。・・・?

 そのような本当に色々な妄想に悩まされたあげく、わたしはその当時出始めていた「携帯電話」に電話機を切り替えた。ごく少数の親しい人間にしか番号を教えずに。

 その深夜。

 「るーーーん、、、、るるるるーーーん、、、」悪魔の鳴き声のような薄気味の悪わるい音を発して震え出す携帯電話。

 かかってきたのだ。

 時間は午前3時30分ピッタリ。
 その時わたしはわたしの理性がガラガラと崩れだすのを感じていた。

 現在わたしは実家で家族と同居の生活だ。
 しかしそれでも電話は恐い。
 特にひとりきりの夜。

 またあの1998年の怪電話の悲劇がもう一度繰り返されるのではないかと。

 

 

 

(黒猫館&黒猫館館長)