【中東紀行 51】大コロッセオ合唱大会 

 

 

  娼婦の大理石案内板からちょっと行った処でオキアイさんがポツリと言った。
 「みなさん、右をご覧ください。・・・」


 


 うわッ!・・・わたしは腰を抜かした。
 大コロッセオだ。大きい。これは大きいぞ。さっそく写真に撮らなければ。ツアー一行も大コロッセオの巨大さに腰を抜かしている。

 オキアイさん「この大コロッセオはギリシャ悲劇などの上演を行い、エフェソス市民のための最も大規模な娯楽場になりました。・・・」

 パシャパシャ写真を撮るツアー一行!さらにツアー一行は大コロッセオの中に入ってみることにした。・・・入ってみるとますます大きい。それに大コロッセオの音響効果のおかげでツアー一行の声が反射して面白い。ツアー一行は「あー」とか「うー」とか声出している。

 そのうち誰が言い出したのか大コロッセオの真ん中でみんなで合唱しようということになった。斎藤さんは「あら、嫌だ」と恥ずかしがってどこかに隠れてしまった。

 

 たちまち小学生のように大コロッセオの真ん中に横一列に整列するツアー一行。曲はなぜか「ふるさと」。

 「♪うさぎ追いし〜かのやま〜・・・」

 そうだな。もう日本を離れてから一週間になるんだものな。そろそろみんな日本が恋しくなってきたに違いない。・・・
 わたしがそんなことを考えていると合唱が終わった。一緒に合唱してくれたオキアイさんが拍手する。
 即興の大合唱大会が終わったらツアー一行全員で写真を撮った。今度は斎藤さんもどこからか戻ってきている。

 「このツアーもいい雰囲気になってきたな。・・・」わたしはしみじみ思った。しかしこのツアーももう明日になればイスタンブールへ引き返して帰国の準備をしなくてはならない。
 ツアー一行に旅の終わりの微かな寂しさが漂いはじめる。そのときオキアイさんが言った。

 オキアイさん「ここからバスに戻れます」
 ・・・そこには?


 

 (黒猫館&黒猫館館長)