【中東紀行 48】グラディエーターたちの栄光 

 

 わたしと斎藤さんのコンビはエフェソスのメインストリートを歩いてゆく。
 このメインストリートは古代ローマ時代は七色の大理石のタイルが敷き詰められ、雨風が当たらないようにアーケードが取り付けられていたという。

 その当時のことを想像するとSF的な雰囲気さえ醸しだされてゆく。



 



 そんな不思議な雰囲気にくらくらしているとイヤホンガイド(ツアー旅行ではガイドが遠隔地から観光客に解説できるように、観光客に電波受信用のイヤホンが配られる。)からオキアイさんの声が聞こえてきた。

 「みなさん中コロッセオに集まってください。」

 「中」があるということは「大」と「小」もあるわけだな。ふむふむ。などと呑気に中コロッセオに向かうわたしと斎藤さん。



 


 中コロッセオに到着すると本物のオキアイさんが現れた。「みなさん、エフェソスにはコロッセオ(円形劇場)が3っつあります。ひとつめの小コロッセオはコンサートや音楽劇に使用されました。大コロッセオはギリシャ悲劇などの演劇に主に使用されました。
 そしてこの中コロッセオでは剣闘士(グラディエーター)を使った闘技に使用されたのです・・・

 グラディエーターといえばそういう映画もあったな。確か猛獣と戦ったりする映画だったはず。

 オキアイさん「グラディエーターに使用されたのは奴隷たちです。奴隷たちはここでグラディエーターとしてお互いに殺し合い、あるいは猛獣を相手に戦ったのです。もちろんどちらかが死ぬまで・・・」

 ひどく残酷だ・・・典雅なエフェソス都市文明の底流に流れる血塗られた歴史よ!西洋文明に介在する残酷な一面をかいまみた気がする。

 オキアイさん「しかしグラディエーターたちは特権を持っていました。殺し合いに勝つことができたら一般市民への昇格が約束されたのです。また女性たちのアイドル的存在になるグラディエーターが現れたり、人気グラディエーターを描いたピンナップが大量に売れたりしました。」

 ・・・・なるほど。グラディエーターとは単なる奴隷ではなくエフェソス都市文明のアイドルも兼ねていたのだな。古代都市文明の犠牲者にして英雄!それがグラディエーターなのか!

 などとわたしがひとりで興奮しているとツアー一行はもう移動し始めている。斎藤さんに肩を小突かれたわたしは次の見学地へ向かった。

(左側の写真はエフェソスのメインストリート)
(右側の写真は中コロッセオ)

 

 

(黒猫館&黒猫館館長)