【中東紀行 46】今野さん、異変
わたしは革製品の店からゆらゆら歩きながら、バスに戻ってみるとなにか異様なうめき声が聞こえる。
「な・・・なんだこの声は??」とバスに駆け込んでみるとバスの中には今野さんと森さんがふたり、今野さんは白い紙袋を口に押し当て、森さんは今野さんの背中をさすっている。
今野さん「ゲ・・・げえ〜!・・・」
何度聞いても嫌なものである。
嘔吐音というものは。・・・
脱水症状が起きかけているな。今野さんが極めて危険な状態であることは医学に無知なわたしでも直感的に把握できた。
しかし今野さんはなぜ?
わたしは森さんに問うた。「いったいどうしたんですか?」
森さん「なにか良くない食べ物を食べられたようで・・・」
わたしは直観的にピーンと来た。「ははー、あのトルコ産のとうがらしだな。しかしあのとうがらしを食べた人間は今野さんの外にも何人かいたはずだ。なぜ今野さんだけが。。。ミステリーだ。」
「げ、ぐえッ!えーー!!」
これは尋常ではないな。・・・こんな激しい嘔吐がとうがらしを食べただけで引き起こされる筈がない。
と思っていたらツアー一行がバスに続々戻ってきた。
相方の斎藤さんが一番心配そうだ。
その他のメンバーも不安な表情は隠せない。もし今野さんの症状がこのまま重篤になってゆけば、恐らく今野さんだけイスタンブールの病院へ搬送されるだろう。ツアー一行から脱落者が出るということはなんとも残念なことだ。
保険・・・こういう時に絶対必要なのが保険なのだ。
外国では当然日本の健康保険が利かない。その代わり、旅行代理店で「旅行保険」に入る人が多い。わたしも「旅行保険」に入ってトルコに行った。
これから外国へ行こうと思っている人は絶対に旅行保険に入っていったほうが良い。掛け金は10000円程度である。そのお金で旅行中の安全が守られるなら安いものだ。
さて今野さんひとりの具合が悪いからといってツアーを中止するわけにはいかない。バスはエンジンをかけると、次の目的地・エフェソスへ向かって走り出した。
(黒猫館&黒猫館館長)