【中東紀行 45】革製品の店 

 

  

 

 

 

 森さんを先頭に服屋に入ってゆくツアー一行。
 ひょいと入り口を見ると「JTB特約店」の標識がかけられている。

 「やっぱりな〜・・・」と思うヒマもなくツアー一行は全員店内に入店した。

 店内はなんだか暗い。それに部屋の中央にお立ち台のようなものが設置してある。服屋の店員らしき人間が出てきてツアー一行全員にチャイ(トルコのお茶)を振舞った。
 ツアー一行が全員席につくといきなり「ズビズビズバーン!!」とユーロビートのような派手な音楽が鳴り響き、天井のミラーボールが回転し始める。奥から登場してくる数々のクールビュティーたち。

 なんと服屋でいきなりファッションショーが始まってしまったのだ。
 クールビューティーたちは一様に革製品を着ている。恐らくここは革製品の店なのだろう。それも恐らくトルコ特産の羊革に違いない。
 大またで歩きまわり、服を脱いだり着たりして見せ付けるクールビューティたち!彼・彼女たちが全員引っ込んだところでファッションショー終了。
 すると今度は店の社長らしきおじさんがお立ち台に現れて、今度はトルコの羊革製品のすばらしさをバナナの叩き売りのごとく、独特の口調で解説する。(もちろん日本語)

 それも終わったらツアー一行は店の奥に招待された。いきなり現れるお洒落な空間!間接照明に照らされた数々の高級品の山!まるでパリの高級ブティックに招待されたようだ。

 ここでわたしは今野さんがいないことに気がついた。斎藤さんに聞いてみる。斎藤さん「彼女、ちょっと気分が悪いそうだからバスに帰ってるって。」それはちょっと心配だな〜・・・と思っていたら店員が寄ってきた。

 店員が「ロング?ショート?」といきなり聞いてくる。わたしが「ショート」と答えると丈の短い革ジャンを持ってきた。着てみるとなかなか心地よい。子羊の革を使っているらしいので革の厚さが薄いし、表面が牛革のようにごわごわしないですべすべして滑らかなのだ。

 「これはいいものだな・・・しかし問題は値段だ・・・」

 わたしが革ジャンを着ながら考えていると店員が目にも止まらぬ早さで電卓を弾く!「35000円デース!!」

 微妙だ。なんとも微妙な値段だ。
 日本なら牛革の革ジャンでも35000円ぐらいはするだろう。それに子羊の革ジャンなど日本ではそうそう入手できまい。

 「しかし・・・」

 これからツアー一行は今晩の宿泊地イズミールを経て再びイスタンブールに舞い戻ってお土産を買い捲るはずだ。ここで35000円の革ジャンを買ったらお土産を買うお金がほとんどなくなってしまうだろう。

 わたしは涙を呑んで革ジャンを脱ぐと「ノー!ノー!」と言いながら店員から逃亡した。

 ふと見るとレジにおばさん・おじさんたちの行列ができている。その中にはトルコ石を買った河野さんの姿も見える。
 「全くスーパーリッチな連中だぜ・・・」などと思いながら店の外に出る。天気は快晴。トルコの乾燥した空気が心地よい。
 ゆらゆら歩きながらバスへ戻ってみると・・・?


(写真は革製品の店の入り口)

 

 

(黒猫館&黒猫館館長)