【中東紀行 38】トルコ石の店 

 

 

  

 

 キャラバンサライからバスで約1時間、ツアー一行を乗せたバスはコンヤ市街に入った。
 コンヤは古代ローマ時代からイコニウムという名前で栄えた街であり、多くの名所旧跡を現在に残すトルコ最古の街のひとつである。

 バスがごちゃごちゃ入り組んだ路地をすいすい走ってゆく。その華麗なバスの運転手のテクニックよ!
 わたしがバスの運転手のテクに関心していたらいきなりバスが止まった。どやどやと降りるツアー一行。なにやらの店らしいな・・・と思ったらまたも「JTB特約店」の標識がかかっている。わたしはまたもJTBの商魂逞しさに舌を巻いた。

 店内に入ると小奇麗な宝石店である。
 とてもトルコとは思えない。パリかローマに来たかのようだ。
 ガラスケースを覗くと青い宝石がこれでもかとばかり沢山並んでいる。「ははー・・・」わたしは思った。「この店はトルコ石の専門店だな・・・」
 といきなり店員が寄って来た。
 「おにーさん、ちょっとちょっと。」やけになれなれしい。
 わたしはちょいと暇つぶしにトルコ石を見てやることにした。渋谷のカジュアルショップで買った指輪がなくなったので、この店で買ってやるのも良いかもしれぬ。

 ちょうど良い大きさの指輪があった。
 気持ちの良いスカイブルーのトルコ石が指輪の真ん中にはめ込まれている。
 わたしはじぶんの指にはめてみた。う〜む。。。良い感じだ。店員に値段を尋ねる。「OOドルでーす!!」

 米ドルで言われたってわかるはずがないではないか。「日本円では?」わたしは店員に再度尋ねた。目にも止まらぬ早さで電卓をはじく店員!

 店員「150000円でーす!!」

 ちょ・・・冗談だろ・・・わたしはあっけに取られた。こんな小さな石が15万円とは。。。わたしは「ノー!ノー!!」と言いながら店員から逃走する!追ってくる店員!「ちょっとおにーさーん!!」

 などとバカなことをわたしがやらかしている間におばさんたちがなにやら歓声をあげた。
 なんだ・・・?と振り向くとあの一人旅の若い女性「河野さん」がトルコ石を買ったというのだ。わたしはあっけにとられた。恐らく10万円以上は確実にするトルコ石をポンとキャッシュで買ってしまうとは。世の中には金持ちがいるものだ。

 おばさんたちが囁く「ちょっとあの娘(こ)ふだん何やってる人なの・・・?」

 そんなこと、関係ねーじゃねーか、と思うのだがおばさんたちにしてみれば自分が値段が高すぎて買えないものをポンと買ってしまった若い女性というものは非常に気になる存在なのであろう。詮索する気持ちもわからぬでもない。

 トルコ石を買うのをあきらめたわたしは店から出た。結局、この店でトルコ石を買ったのは河野さんひとりであったらしい。JTBにしてみれば大赤字というところか。仕様がない。高すぎるんだ。高すぎるんだよ。もっと庶民の金銭感覚に根ざした店に連れていってくれ。

 ツアー一行はトルコ石の店から再びバスに乗り、バムッカレへ向かって走り出した。

(画像はトルコ石のネックレス)

 

 

(黒猫館&黒猫館館長)