【中東紀行 36】オキアイさんの過去
ツアー5日目。
カッパドキア、洞窟ホテルAM5時、コンヤ経由バムッカレ行きのバスが出発した。
おばさんたちはもうぐったりした表情でバスのソファーに横たわっている。そろそろ疲れが出てくる時期なのだろう。口を利く人はひとりもいない。
「ゴト・・ゴトゴト・・・」バスの移動音だけがうつろに響いてくる。わたしもうすらぼんやりしていたらいつの間にか眠ってしまっていた。ハッと目が覚めても時間はまだAM9時である。
一行はトイレ休憩に入った。
のろのろとけだるくバスを降りるツアー一行。トイレの料金は1トルコリラ(日本円で100円ぐらい)。
トイレを済ませてバスの戻るとツアー一行はかすかに元気を取り戻したようだ。
とここでオキアイさん登場。
オキアイさんはゆっくりした口調で「おはようございます。」と挨拶するといつもの「オキアイさんのお話」が始まった。おばさんたちの目が輝く。
オキアイさん「わたしが日本に留学したのは21歳の時です。。。」
オキアイさんがついに自分の身の上を語りだした!わたしもわくわくし始めた。
なんでもオキアイさんは幼少の時期から日本に憧れていたそうである。「大きくなったら日本に留学するぞ!!」・・・こう思うトルコ少年は多いそうであるが、その多くは途中で挫折してしまうそうである。そういう意味でオキアイさんはトルコのエリートなのだ。
オキアイさんは必死で日本語を学び日本の大学の「観光学科」に入学したそうである。つまりその時期からトルコの日本人向けの現地ガイドになるというビジョンが定まっていたらしい。いつまで経っても自分の進路が決まらない日本の学生・生徒に聞かせたい話である。
オキアイさん「わたしは日本で嫌な思いをしたことがあります。しかし楽しい思い出のほうが嫌な思い出よりもっとずっと多いです。だからわたしは日本に留学できて本当に良かったと思っています。そしてわたしは今でも日本が大好きですし、この仕事に誇りを持っています。」
トルコ人に日本が褒められるとなんだか自分が褒められたような気分になる。おばさんたちも同じなのだろう。このお話でおばさんたちの「オキアイさん人気」がさらに高まった気がする。
オキアイさんのお話が終わるころ、ツアー一行を乗せたバスは「キャラバンサライ」という場所で停車した。
(黒猫館&黒猫館館長)