【中東紀行 33】トルコのじゅうたん 

 

 カクマイルの地下帝国入り口からバスが出る。
 カッパドキアとは意外と大きな土地であるらしい。
 日本で言えば岩手県ぐらいあるのではなかろうか。
 たった一日でカッパドキアをめぐるのはかなりの強行軍であるらしい。バスの中ではアイスクリームを食べた瞬間に体力回復したおばさんたちがぺちゃくちゃしゃべりだした。
 まったくさっきまでハアハア言ってたくせに・・・とわたしがおばさんたちを冷ややかな目で見ているとバスが止まった。

 なんでもここはJTB特約店の「じゅうたん屋」らしい。
 「なるほど〜・・・」とわたしは思った。観光客たちに高価なじゅうたんを買わせて、その儲けをじゅうたん屋と山分けしようとしているのだな。。。なんというJTBの商魂たくましさよ!!

 じゅうたん屋に入ると即座におじさんが飛び出してきた。「いや〜、どうぞ。どうぞ。」日本人相手の商売に慣れているのだろう。非常に流暢な日本語を話す。
 さらにツアー面々を椅子に座らせると、チャイ(トルコのお茶)が振舞われた。

 店のおじさんが再び現れる。今度は黒子のように2人の若者を後ろに連れている。若者は二人とも丸めたじゅうたんを持っている。
 おじさんが手で合図すると若者がまるで忍者のようにすばやくじゅうたんを広げた。その間なんと一秒!まるで大阪の名人芸を見ているようだ。


  


 おじさんが浪花節口調でトルコのじゅうたんの由来を話す。なんでもトルコでは結婚する女性は必ず自分で織ったじゅうたんを嫁入り道具に持ってゆかなくてはならず、じゅうたんを織るのが下手な女性は結婚もできないそうである。逆にじゅうたんを織るのが上手い女性は引く手あまたであるそうだ。

 こういう話を独特の口調でトルコの女性の薄幸さを強調しながら話すものだから、おばさんたちが思わず涙ぐんでしまうのも無理はない。

 とここで即座に商談開始!
 涙腺を刺激され感傷的になっているおばさんたちに、いかにこの店が値段が安く安全で日本への直行便も無料にするとかを話し出す。

 おばさんたちはたちまち店の主人のカウンターに群がった。
 と言ってもトルコのじゅうたんとはそんなに安いものではない。玄関に置く一畳ぐらいのもので2〜3万円、6畳部屋用でも10万円以上はするのだ。

 わたしはトルコ人の商売上手さにあっけに取られた。これだけの商才があるのならトルコは中国の次に将来有望な経済大国になりあがってゆくだろう。

 わたしはもちろん買わない。
 じゅうたんなんてものを外国で買いあさる趣味はわたしにはない。
 それでもおばさんたちはどんどん激高な値段のじゅうたんにユーロやドルを支払ってゆく・・・

 「アホくさ・・・」
 わたしは店の中をうろうろし始めた。
 すると店の片隅に・・・
 

(黒猫館&黒猫館館長)