【中東紀行 25】洞窟ホテル到着 

 

 バスはごとごと揺れ続ける。
 
 首都アンカラからネフシェヒル(カッパドキア郊外)への長い長い旅路。わたしはバスの中でぼんやりと考えていた。

 日本とは全然違うな。
 どこまで行っても平原だ。
 まるで月面を走っているみたいであるな。

 中東は砂漠の世界である。
 トルコは砂漠の世界とはちょっと違うが岩ぼこの世界である。
 この風景は島国・日本ではちょっと見られない性質のものだ。
 わたしはユーラシア大陸のスケールの大きさにひたすら圧倒されていた。

 おばさんたちはもう全員疲れきって寝ているように見える。

 夕日が地平に沈み始めたように思えた時、突然森さんが大声を出した。

 「ハーィ!みなさん。もうすぐネフシェヒルに到着です!今日の宿はカッパドキア名物の洞窟ホテルです。ごゆっくり楽しんでください!」

 「洞窟ホテル」とは岩をくりぬいて部屋を作ったという大変に奇抜な作りのホテルであり、カッパドキア名物のひとつでもある。

 わたしはまだ見ぬ「洞窟ホテル」に胸を躍らせた。
 やがてくねくねとした山道にバスが入る。15分ほど山を登ったところでバスが止まった。

  

 どやどやとツアー一行がバスから降り始める。
 わたしは洞窟ホテルの前に立った。
 確かにこれは大変に奇抜な建造物である。一個の巨大な岩のあちこちをくり抜いて部屋を作ったのであろうか。まるでアウトサイダー・アートのような洞窟ホテルへおそるおそる入ってゆくツアー一行。

  

 森さんがひとりひとりに鍵を手渡す。

 わたしが部屋に入ろうとすると、なぜかあの斎藤さんが後ろから声をかけてきた。

 「貴方、ちょっとお待ちなさいよ。」


(写真は2枚とも洞窟ホテル)

 

 (黒猫館&黒猫館館長)