【中東紀行 09】黒衣の女たち
観光バスがイスタンブール歴史地区に入った。
ここから先はバスは使用できない。
徒歩でイスタンブール歴史地区の中心であるブルーモスク・アヤソフィア・トプカピ宮殿を目指すツアー一行。
先頭は現地ガイドのオキアイさん先導する。後尾は添乗員の森さんが守る。怪しい連中が接近したら森さんがねじふせるというわけだ。
説明が遅れたが添乗員の森さんは身長180センチはある大柄な女性で、海外でのケンカ・揉め事に慣れているらしい非常にたのもしい人物である。
頭に巨大なパンを乗せたトルコ人が通る。どうしてパンが頭から落ちないのか日本人にはわからない。しかし手で押さえていないのになぜかパンは頭から落ちないのであった。
そのうち向こうから異様な黒衣の集団が現れた。目だけ出して後は全部黒いマントで体を覆っている。まるでKKK団のような不気味さである。
オキアイさんが小声でつぶやく。
「あの人たちはトルコでも保守的な団体に属する人たちです。関わり合いにならないように離れて歩きましょう。」
この黒衣の集団は実は全員女性である。イスラム圏で伝統的な「ニカーブ」と呼ばれるマント状の服を着用している。
しかし彼女たちはトルコでは例外的な存在である。
トルコ社会では国父アタチュルクの近代化政策の一環として、公共の場所での女性のスカーフ着用さえ禁じられている。いわばニカーブを着た女性はイランやイラクでは正統であってもトルコでは異端である。
つまり彼女たちはイスラムの戒律によって無理やりニカーブを強制されているのではない。自ら進んでニガーブを着用しているのだ。
わたしだったら絶対イヤである。なにが悲しくて目だけだして歩かなくてはならないのか。
しかし世界には到底日本人には理解できない考え方もあるのだ、とわたしは自分に言い聞かせて納得した。
やがてツアー一行はブルーモスクの敷地内に到着した。入場料を払ってブルーモスクの内部に入ってゆく。
(写真はブルーモスク)
(黒猫館&黒猫館館長)
