【中東紀行 08】ボスボラス海峡の夜明け

 

 マルマラホテルからイスタンブール歴史地区に向かう大型バスが走る、走る。

 わたしは一番後ろの席で遠足に行く小学生のように窓の外をきらきらと輝く瞳で見つめていた。

 ここでバスの一番前の席から立ち上がったダンディな紳士がいた。「おはようございます。みなさん。」歳の頃は40歳ぐらいであろうか。落ち着いた物腰と柔和な表情が魅力的な好男子である。

 「これから7日間、みなさんのツアーに同行させていただきます現地ガイドのオキアイと申します。」
 添乗員の森さんが拍手した。
 たちまち拍手の波がツアー全員に広がってゆく。

 オキアイさん「わたしは日本と日本人大好きなトルコ人です。日本に留学したこともあります。みなさんよろしくお願いします。」

 オキアイさんの流暢な日本語にツアー全員が圧倒された。ほとんど日本人と変わらない。凄い人もいるものだ。

 オキアイさんが挨拶をしているうちに観光バスはボスポラス海峡を左手に見た。世界地図でボスポラス海峡の左手がヨーロッパ(イスタンブール)、右手が中東である。トルコのヨーロッパ地区と中東地区はボスボラス海峡でつながっている。


  


 このボスポラス海峡は黒海とエーゲ海を結ぶ海峡である。ゆえに黒海に港を持つロシアは必ず通らなくてはならない。後でも述べるがこの部分からロシアとトルコの根深い確執が昔から存在している。



 それにしても早朝のボスポラス海峡のなんとすばらしいことよ。黄金色に揺らめく海。透き通った水。ヨーロッパの海というものはあまりに美しい。

 やがてオキアイさんが声を出した。
 「これからイスタンブール歴史地区に入ります。」

 

(黒猫館&黒猫館館長)