トイレのない家

(2010年7月23日)

 

 

 

 ない・・・
 どこにもない・・・
 この家にはトイレがない・・・



        ※        ※



 住宅でまず必要なのは出る・入るの用件を満たす「玄関」とその場で生活する「居間」は絶対に必要不可欠であるが、「水まわり」(台所・トイレ・風呂・洗面所)も必須であろう。
 一昔前の共同アパートには風呂・洗面所が無かったアパートが多かったらしいが、最近はそのようなアパートは除除に減っているらしい。
 しかし昔から「必ず」あったものといえば「台所」「トイレ」だ。
 このふたつは人間の生命活動に密接に関係している「食べる・排泄する」に関わる場所であるだけに、住宅から外すわけにはいかない。


 しかし最近妙なウワサがたち始めた。
 「トイレのない家」が日本のどこかに存在するというのだ。

 わたしは「はは〜・・・」と思った。「トイレのない家」の都市伝説は1970年代までさかのぼる。
 
 この当時猛威をふるっていた貸本系恐怖漫画の出版社「ひばり書房」から森由岐子『魔怪・わらべの唄』という漫画本が出版されている。
 この漫画本の内容はある家に新興宗教勧誘員が訪れるが、その家の玄関で突如便意を催し、トイレを貸してもらおうとするのだが、どこを探してもトイレがない・・・という不条理感に充ちた傑作恐怖漫画である。

 こういう話を聞いて「所詮、漫画本の話、ハッハッハ・・・」と笑い飛ばすのは自由だ。しかしごく少数であるがトイレのない家を目撃した人間は少数であるが存在しているらしいのだ。

 トイレというものは隠されているものである。
 道路の通行人が横にある家にトイレがあるかないか伺うことはできない。とするとこの都市伝説はトイレのない家に偶然に立ち寄った新聞勧誘員や物売り、あるいは住宅修繕人、庭師などが体験したものであるだろう。



 ※       ※



 トイレがない、ということは「生命活動をしていない」ことを意味する。するとトイレのない家に住む人間とは人外の者であるだろう。幽霊、妖怪、宇宙人、あるいはもっと怖いなにか・・・


 ほら、、、貴方の家のとなりにもしかしたらトイレのない家が建っているのかもしれないぞ。そこに住む人外の者は今日も恐ろしい策略を練っているのだ。来るべき「その日」のために。


 「トイレがない家」、それは人間の皮を被った、人間への攻撃者(アタッカー)の秘密基地であるのかも知れない。

  

(黒猫館&黒猫館館長)