ミエナイココ
流美琴
安いホテルの部屋に入ってきた少年は、とても華奢な躰をしていた。明らかにプロのそれと判る、誘いに満ちた視線を送りつけながら、そのくせノンケのような気配も匂わせているあたり、仲介業者が一押しだと言うのも頷ける。
男娼を買うのは実に一年振りだった。普段なら女性にしか興味を感じないはずなのに、不意に男の躰が欲しくなる。
「ね、名前教えてよ」
この台詞は万国共通なのか、娼婦を買っても必ず聴かされる言葉。行為の最中に名を連呼すれば、誰しも喜ぶと思い込んでいることが、愚かしくも微笑ましい。
スラックスから、二本のナイフを出す。一本は小さなサバイバルナイフ、もう一本は大型のバタフライナイフ。小さい方を、ベッドに腰掛けている少年に投げた。
「…何、これ?」
さすがに商売用の笑顔が薄れ、半分怒ったような不審気な表情が浮かぶ。顔の造詣が美しい分、その表情はより艶光っていた。
「それで自分の服を切れ」
ナイフとはものを切り裂くためのもの。当然の用途なのだが、少年は眉間を顰めて睨みつけてきた。
「何だよ、それ。俺はそういうの好きじゃないって聞かなかったのかよ」
確かに、仲介業者はノーマルで頼むと言っていた。それを考慮するつもりはない。
片手でバタフライナイフの刃を出す。乾いた金属音は、いつ聴いても小気味いい。その大振りの刃を少年に向け、
「早くしろ」
と顎をしゃくった。何に怯えたか、怖々とサバイバルナイフの刃を起こしていく。
華奢な躰と同じ細い指が、小刻みに震えているのがはっきりと判った。恐怖よりも屈辱によって。身をひさいでいるとはいえ、それなりのプライドは持っているのだろう。それが傷つけられると判っていながら、従わざるを得ないことが、手の動きに表れていた。
刃が、少年の身に着けているコットンシャツのボタンにあてがわれた。ナイフの動きを少しでも小さくしようと、ボタンの糸だけに切れ目が入る。一つ二つと飛ばしながら、少年はやはり震えていた。
バタフライナイフの側面を、白蝋の頬に当てる。胸元の小さなナイフの動きが止まった。吸いつくように触れている銀の輝きは、きっと彼の視界いっぱいに広がっているに違いない。
「服を切れと言った。…こうやるもんだ」
ボタンを外すだけなら、ナイフの必要はない。少年の手を握ると、大きく横に動かした。
「あつっ…」
完璧に研いであるため、布地は音もなく切り裂かれた。そして、少年の胸に一本の線が走る。
初めは胸を上下に分ける線だったものは、ゆっくりとその太さを増していく。朱の筋は、張力の限界を迎えたところから、筋肉に沿って腹へと伸びていった。
彼はもしかしたら、親にも殴られたことがないのかもしれない。丸で白痴の子供のように自分の胸を見つめている少年の手によって、ナイフは繰り返し動いていた。縦横に服は千切れ、少年の肌は晒されていく。そして朱線は、いくつのも筋に分かれていった。
「何…すんだよ!」
袖を残して、ほとんどの部分がぼろぼろになったシャツが、ベッドの上に散乱している。そこで我に返った少年は、ようやく自分の手を束縛していたものを振り払った。ナイフを握り直し、喉の高さで構える。
「あんま、舐めた真似すんなよな」
最初に見せていた誘惑する気配は、乱暴なものに変わっている。人に怪我を負わせることを躊躇った経験はないようだ。ナイフを構える様も、なかなか堂に入っている。
サバイバルナイフが真っ直ぐに突き出された。彼は会心の一撃を繰り出した気分だったろう。しかしそれは、絶望に変わるためのエッセンスでしかない。
「うわぁっ!」
少年が叫ぶ。その躰は、仰向けにベッドへと押しつけられていた。ナイフを持つ手はその頭上で押さえられ、投げ出す形になった脚の間には膝を差し込んでやる。
少年の手にはサバイバルナイフがあり、それを押さえ込む手にもバタフライナイフがあった。二つの刃物が触れ合い、澄んだ金属音が響く。その音を聴きながら、暴れる胸の傷にきつく吸いついた。
「あっ…やだ…」
トップクラスと言い張るだけはあって、感度は最高のようだ。舌の先でなぞるだけで、もがき方が変化する。傷に触れる感触は、彼の中では痛みとは別なものになった。
手を押さえているのが面倒になってきた。舌の動きだけで脱力しかかっている今、手を解放したところで逃げ出すことはないだろうが、あとのことを考えて固定しておくに越したことはない。
一旦躰を離すと、少年は妙に潤んだ目でこちらの動きを追う。何を期待しているのか、赤く染まった舌すら覗かせて。
カバンの中から、レザーでできた手枷を出し、少年の目の前にちらつかせてみた。見慣れていないのか、それを何だか理解もしないでこっちの顔ばかりを見ている。
音は立てずに、二つの輪が彼の両腕をホールドした。これも皮でできた、輪を繋ぐ紐をベッドの欄干に括りつける。バンザイに似た姿勢になってから、彼は気がついた。
「ちょっ…何する気だよ!」
忙しいやつだ。ちょっとの刺激に溺れてみたり、屈辱に理性を取り戻してみたり。まあ、そうでなければ楽しめないが。
人間の躰というのは、腕を押さえ込まれると極端に動きが鈍くなる。少年がかろうじて自由になる足を蹴り上げたが、何にも当たることなく虚しく空を切った。それがベッドに落ちた瞬間に膝で押さえ込んで、屈辱に歪んだ顔を眺める。その顔の横に、少年から取り上げたサバイバルナイフを突き立てた。
「…ひっ」
「動くと、切れる」
ご自慢の顔に傷をつけたくはなかろう。ナイフを横目で見つめたまま動かなくなる。顔に傷が入ったところも見てみたい気もするのだが。
荒い呼吸を繰り返している胸に、もう一度舌を近づけた。乾き始めていた血を、舌の先で剥がしていく。
「いっ…て…ぁんっ」
痛みに反応した声は、一瞬で濡れたものになった。横一文字に伸びる傷を、わざと広げるように舌でなぞると、新たな朱色が膨らむように溢れ出す。
実に甘露な味わいに、思わず笑みが漏れてしまった。ドラッグやシンナーとは無縁の味がする。
「あっ…ぅあ…っん」
少年はいつの間にか目を閉じていた。目を開ければ視野の中にナイフが見えてしまうのを怖がるように、胸の上を動くものだけに集中している。それは淫らなものへの集中であり、時折触れてやる胸の突起が、硬く立ち上がっていることで彼の意識の方向を示していた。
舌を触れさせたまま、バタフライナイフを持ち直した。チャリッという乾いた音に、少年の目が勢いよく開く。手枷のせいで少ししか持ち上がらない首を必死に伸ばし、音がしたところを探し出す。
「やだっ!やめ…っ」
ナイフの刃を、チノパンを持ち上げている部分にあてがう。舌の動きで力を持ったそこは、手首の返しだけでボタンを高く弾き飛ばした。ファスナーに沿って切り開くと、薄い布地の下でずいぶんと大きさを増しているものが震えている。
若いからか、小さな布はそれが怒張するのをカバーしきれていない。肌と布の間に隙間ができていた。そこに刃をそっと入れると、感触に少年の全身が強張った。ここで刃を立てて引いてみるのも面白いが、それでは楽しみが持続しない。
「あっ…はぁんっ…やぁ…」
布の上から握り締めてやると、まるで職業病のような甘い声を出した。恐怖心から、刺激に対してあまりにも敏感になっている。刃物による脅迫と、手枷による束縛が、感度を増長しているのは明らかだ。数回揉みしだいただけで、手の中には雫がつき、布は濃く色を変えていた。
「うっ…ぁあっ…んっ…」
力を入れすぎないように、少年のそれを嬲り続ける。決定的な刺激は、そう邯鄲には与えてやらない。
「やだ…ぁ…っんぁ…」
次第に吐息は哀願に変わる。それが聴きたくて焦らしているのだ、もっと鳴いてもらわなくては。
「イキたいか?」
少年の顔の前で問いかける。愛撫に涙を溜めている少年の瞳は、純粋な欲情に満ちていた。もう恐怖を忘れそうになっているのか、つまらない。
ナイフの刃を寝かせて、下着の横から忍び込ませた。より強い刺激を待ちわびているところに、もう一度ナイフの冷気をそっと触れさせる。
快楽から恐怖へ、少年の精神は端の方から崩れ始めていた。
「やだっ!もういやぁ!」
子供じみた絶叫が耳につく。刃を引き、下半身を解放してやった。完全に崩壊するには、まだ早いだろう。
急な角度で立ち上がっていたそれは、押さえ込んでいた布が切り裂かれた瞬間に、汚物を吐き出してしまった。布から解放してやっただけなのだが、これは本気で感度が良すぎる。
「ふぁっ…っ…ぅ…ん」
果てて緊張が緩んだのか、少年はすすり泣きのような声を上げた。それを横目におさめながら、普段は持ち歩かないカバンからある品物を取り出す。わざわざ涙に滲んだ少年の目の前にぶら下げた。
「…や…そんなの…」
涙が顔の両側面へ流れ落ちている。見ただけで自分がどうされるのかは判るらしい。弱々しく拒絶の意志で振られている首を掴むと、一度接吻けた。
先に舌を絡めてきたのは少年の方だった。少しでも先延ばしにしたいとでも言うように、執拗に口の中を暴れまわる。それが無駄な努力だと、次の瞬間に彼は思い知ることになる。
「…ひぁぁっ…う…ああぁ!」
手にしていたものを、少年の下半身へと捻じ込んだ。その行為自体には慣れているのだろう、本来なら何も受け入れるはずのない下半身の口は、絶叫する上の口とは裏腹にあっさりとそれを全て中に咥え込んだ。
手元のスイッチを入れると、触れている部位からその振動が伝わってくる。小型のバイブレーターは、見た目よりも激しく少年を犯していた。
「あぁっ…いっ…ひぃ…ぁん…」
不規則なリズムに踊るように悶えている。上に重ねていた躰を離し、その様を見下す。ベッドに括りつけた手枷が、軋む音を何度も立てていた。
娼婦を買っても、こういうものを使ったことはない、正常位で事を為すだけで充分。よくは判らないが、男を買うときだけは家を出るときから用意してしまう。
このままだろ服を汚されてしまうだろう。悶え狂っている少年の横で、全ての着衣を脱いだ。すでに切れ端のシャツもその動きで飛ばしてしまった少年と、同じ姿になる。
「ぅっ…い…ぃっ…はぁっ」
絶叫は随喜の泣き声に変化していた。見ると、バイブを食われこんだ場所が、まるで別の生き物のように蠢いている。先走りの雫をシーツの上に飛ばし始めたものに手を触れてみた。
「やぁぁ…あ…ふ…」
ちょうどその真ん中あたりときつく握り締める。細い腰が跳ね、置くまでめり込んでいたバイブの先端が顔を出した。先に何度もイカれるのは面白くないので、繋がっているコードを思い切り引いて、奇妙な動きをしているそれを外に出す。
「あっ…や…ん」
刺激の不意の消失に、少年が大きく躰を揺らす。手の中で膨脹しているものを同じ、口惜しそうな表情をしていた。
「本物はな、こっちなんだよ」
突き立てるのに機能的な状態になっているものを、待ち構えるように緩んでいるところに押し当てた。一切抵抗を覚えることなく、肉壁が包み込むように受け入れる。が、痛みが伴わないわけではない。
「いたっ…ひぃぃい…ぅぎ…」
バイブレーターより数段容量のあるのもは、少年の柔肌を引き裂いた。朱色のついた液体が、まだ根元まで入り込んでいないそれを伝ってシーツに花を散らす。そのかわり、程よく潤ったかのように滑り込んでいく。
「いたいいたいいたい!」
意識が覚醒するには、強い痛みが一番効果的だ。喘ぐだけだった少年が、躰を仰け反らせながら意味のある言葉を口にした。無視して根元まで一気に入れると、水が溢れるような音と共に新たな傷が接合部分に開いた。
「ぐ…っも…ぉや…めてぇ…」
痛みによって引き戻された理性が、肉体の苦痛を拒もうとしている。握っていた手を緩めて上下に動かしてみても、躰への刺激を拒み続けていられるものかな。
手で扱き上げながら、腰を激しく蠕動させた。挿入部分の激痛と、前立腺への圧迫、それに最も感じる部分であるものへの直接的な摩擦による刺激。少年の理性が陥落するまでには、ほとんど時間を必要とはしなかった。
「ぁはっ…ああぁぁ…んっ…ぁあう…」
動くたびに鮮血が飛び散る。にも拘らず、少年は自ら足を絡めてきた。深く貫かれることを、必死になって求めてくる。せっかく痛みが意識を戻したのに、その痛みすら淫らなものに変えてしまった。
「いいっ…い……ぃくっ…!」
甲高い声を上げて、少年は人の手の中に爆発してしまった。おやおや、こちらとしてはまだ時間をかけるつもりだったのだが。一度放ってしまうと、途端に締りが悪くなってしまう。全身を弛緩させているところに、さらに激しく腰を突き上げた。
「ひぎっ…休…ませ…てぇ…あぁっ…」
そんなつもりは毛頭ない。何とか逃れようと引く腰を、追いかけるように密着させた。最奥を抉りながら、少年の躰が浮くまで揺さぶる。全てを放出したはずのものが、直接内部から圧迫されて力を取り戻しつつあった。
強制的な勃起というのは、相当の苦痛を伴う。すでに自分の淫欲は達成しているにも拘らず、物理的な反射による充血。またも先端に白い雫が盛り上がっても、少年は泣き喚いていた。
「いやぁっ…ふ…っく…」
彼が苦痛から逃れるには、手段は一つしか残されていない。少年は咥え込んだ部位を戦慄かせ、中にある怒張を早く解放させようと蠢いた。
これが、一番快感をもたらしてくれる。早くイカせれば解放されると信じているから、持てる全てを駆使してくるのだ。例え仕事でも絶対にしないような、ひどく淫らな締めつけ方さえ、彼はもう躊躇しなかった。
「あっ…ぅんっ…はぁ…ぁ」
涙声はそのままに、確実に艶を帯びてくる。深部を抉るほどに、少年に与えていたものは強制ではなくなっていた。
「…………」
もう少し堪えるつもりが、意外と早く少年の中に出してしまった。全て注ぎ込んでから見てみると、少年の方はあと少しの刺激を必要としている。躰内のものの大きさが変化したのに気づいて、最後まで貫かれるのを望むように締めつけがきつくなった。が、それに応じてやる気はない。
「…ふひぃ…」
躊躇うことなく引き抜くと、少年の首が大きく反った。朱と白濁が混ざった線が、今離れたところを一瞬だけ繋ぐ。それは少年の躰内から、じくじくと染み出していた。二色のコントラストは、男に突き立てたときに見れる特有のものだ。
ベッドにナイフを二本とも置き去りにしてしまっていた。サバイバルナイフは刃をしまい、カバンに入れる。バタフライナイフの方を手に取り、まだ屹立しているものに側面を当てた。
「…ひぁ…」
冷たさと鋭さで、少年が息を呑む。しかし、それは恐怖とは違うものだった。立ち上がっているものは、歓喜しているように震えている。無理矢理だったはずの勃起は、彼の躰が求めていた。放つためならば、どんなわずかな刺激さえも貪欲に欲している。
「ひゃぅっ…ああぁぁ…はぁ…ん」
角度に沿うように、ナイフが浅い縦の筋を描いた。少年はだらしなく口を開き、舌と共に吐息を零す。とうとう壊れたようだ。
まだ達することのできないものから、朱い血液が下へと滴っていく。浅い傷でしかないのに、鬱血していたものは流れを止めそうになかった。先端から伝う濁った雫が時折その線と交わり、少年の肌を粟立たせる。
「……い…ぁはぁ…」
何もしないで、いつイクのか眺めてみた。傷に入る白濁の液体が唯一の刺激であり、微弱なそれはずいぶんと時間をかけて少年を嬲り、昂ぶらせていった。
「あっ…ひはぁぁぁ …っぁ」
それでも、上へ向けて噴射されたものの勢いは激しかった。達するという快楽に追い縋るように、少年が壊れた悲鳴を上げる。その音は、長く尾を引いていた。
そろそろ最後の仕上げをするとしよう。半目になってひくついている少年は、もう淫らな感覚以外は何も判らない。本能的な耽溺は、間違った方向へ向いていた。
接吻けてみる。舌を絡め、柔らかい口唇に歯を立てると、まるで子供のような笑いが喉の奥から伝わってきた。笑い声を聴きながら、白く輝くような首筋に口唇を下ろす。ただキスマークをつけるという普通の愛撫すら、彼は耐えることを忘れている。
「あぁんっ…う…ふぅ…も…っとぉ…」
いくらでも与えてやろう、永久に。
胸の突起に思い切り歯を立てて、千切れる寸前まで味わってから、少年の上から躰を起こした。胸の新たな傷にのた打ち回りながら笑っている。その腕の戒めを、左側だけ外してやった。
そして……
「うぎっ…ぎゃぁぁぁぁ っ!
動物のそれと同じ絶叫が、断続的に響き渡る。壊れた精神にトドメを刺したのは、再び躰内に入れてやったバイブレーターだった。
これは結構な自信作だ。振動だけではなく、低周波のパルスを発するように改造してある。内臓に直に流れている電流は、少年の全てを壊すだろう。
「ひぃぃ…ぐ…ぎぁぁっ」
人間のものではない声を上げ続ける少年に背を向け、バスルームに入る。シャワーを浴びる水音よりも大きな叫びは、実に清らかなBGMだった。
躰の水を拭い、着衣を整え、手枷とバイブレーター以外のものを片付けてから、もう一度少年をじっくりと眺めた。
下半身と胸を血で染め、強弱をつけて流れる電流に、躰だけでなく精神までも犯されている。その左手が朱色に染まっているのは、二色の液を零し続けている自分のものをひたすら扱き上げているからだ。
「ひゃぁ…んっ…あっは…はぁぐ…」
もう彼は普通の生活は送れないだろう。よくてニンフォマニア、悪くすればここで人生の終止符を打つことになる。まあ、どちらが幸せかは知ったことではない。
電流に慣れてきたのか、絶叫はすっかり狂声になっていた。その甘美な声をもっと聴きたい気もしたが、諦めて部屋を出た。宿泊分の金額を払ってあるから、彼の狂乱を邪魔するものは朝まで訪れないだろう。存分に狂って構わない。
ホテルの外は、まだ賑やかな夜の世界だった。時計を見ると、日付が変わる前には家に帰れそうだ。今日は妻がボルシチを作ると言っていた、食いそびれる手はない。
今もあの少年から流れ続けているはずの朱色に似たシチューを思い浮かべたとき、些か派手に腹の虫が鳴いた。
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