『そうかも知れない、あるいは』
渡辺啓助著。初版1976年5月10日。桔梗屋発行(発行人=稲川方人)。筒函入完本。装釘=鳥居雅彦。挿絵=渡辺啓助。定価=1400円
内容>
「そうかも知れない、あるいは」
「東海村にて」
「新橋付近昏くなりつつ」
「浜離宮」
「殺し屋ジャック」
「海景」
「グリンデルワイドにて」
「ネパールの山」
「ぜいたく」
「シャロット・マルランへの期待」
「春」
「廊下の椅子で」
「鴉」
「下山事件」
「ロンドンの薔薇」
「薔薇と悪魔の詩人」と称される探偵作家・渡辺啓助の唯一の詩集が本書。「推理作家の詩集」というだけでわたしたち読者はなにか猟奇的な内容の詩群を期待してしまうが、本書はそのような期待に十分応えてくれた詩集と言ってよかろう。
「屍体」「「殺し屋」「大道女占い師」「拘束服」>このような用語が頻出する極めて「推理作家の書いた詩集」らしい内容となっている。
さて本書の装釘についてであるが、筒函に入っている本は極めて珍。
外装なしで完本として扱われる場合もあるようだ。
また筒函に貼ってある題箋がない本が存在しているらしい。
それゆえ本書の「完本」の定義はなかなかに難しい。
古書価は函が無いならば一万円以下、函つきなら5〜7万円つける場合もあるようだ。
いずれにせよ古書価の高い本と言える。
本書は昔から極めて出ない本である。まだ持っていないコレクター諸氏は心を鬼にして探してもらいたい。運が良ければ2〜3年の探求で発見できるだろう。
ちなみにわたしは発見・入手まで10年かかった。
なお、本書の「挿絵」は一枚だけで「鴉」の絵。殺伐とした詩群に純朴な挿絵。
この対比が極めて面白い。
(黒猫館&黒猫館館長)