『あんま〜愛欲を支える劇場の話〜』
豆本。土方巽 dance experience の会発行。暗黒舞踏8周年記念発行。無綴紙片11枚入(二つ折にして収納)内三枚が池田満寿夫版画。200部限定版。タトウ・筒函入完本。
内容>澁澤龍彦「彼女は虚無の反事を恐れる」、加藤郁乎「永遠と敬遠(土方巽に)・詩」、三島由紀夫「「美の襲撃」より」、加藤郁乎「溺死愛」、埴谷雄高「「闇のなかの思想」より」、三好豊一郎「処理場(土方巽に)・詩」、池田満寿夫「オリジナル・エッチング・3点」、勝井三雄「ソオテイ・レイアウト」。
本書は「土方巽の著作」と思われている方もいるようであるが、実は土方巽は本書では一行も執筆していない。執筆者は土方巽の暗黒舞踏に共鳴する7人の作家・版画家である。
故に本書は暗黒舞踏史において重要な本であるが、土方巽の肉声を読むには『病める舞姫』(白水社)を待たねばならない。
とはいっても本書の執筆陣は非常に豪華である。澁澤龍彦・埴谷雄高はもちろん、特に三島由紀夫の参入は非常に大きい。ちなみに三島は『詩画集・大あんま』には執筆していないから非常に貴重な発言である。
さて本書は「謎」が多いとされる。
そのうち一番大きな「謎」は「桐箱」の有無であるが、これはわたしが調査した結果、「ついていなくても完本として扱われる」のが正解であるようだ。
また池田満寿夫の銅版画におけるサインの有無であるが、これも「別に入っていなくてもよい」ものであるらしい。
一番の注意点は奥付けの書いてあるオレンジ色の紙で、これがまたペラペラの薄い紙なので無くなりやすいようだ。この「オレンジ色の紙」には厳重注意してもらいたい。
なお、本書の古書価であるが、「安く掘り出せば5万円、高く買えば15万円」となかなかに幅がある。
以前はまるっきり出ないレアな本であったが、昨今は少しづつ出てきているらしい。
マニヤの諸君にはこの期を逃さず、ガッチリ本書を入手してもらいたいものである。
(黒猫館&黒猫館館長)