AM7時。
朝のまぶしい光が窓から差し込んでくる。
時は陽春・五月。ゴールデン・ウィーク。
あのイタリア・フランス旅行から一ヶ月が経とうとしていた。
わたしは机に座るとコーヒーを入れた。
濃い目のブラックコーヒーをゴクリと飲む。
苦い。・・・
しかしこの苦さが良い。
コーヒーの苦さが解ればオトナだと誰かが言ってたな。
わたしはコーヒーをこぼさないように丁寧にイタリア・フランス旅行のアルバムを棚から引き出して、そおっと開いた。
初めての外国の都市、ミラノで緊張して立っているわたしがいる。
水没する都市・ヴェネチアのゴンドラに乗っているわたしがいる。
春四月の明るい陽射しの中ではしゃいでいるわたしがいる。
ローマのスペイン広場でスリに怯えているわたしがいる。
そして・・・
あのパリでの最後の晩餐、吉永さんとのツーショット写真。
やけにオッサンっぽく写っているな・・・と苦笑しながらわたしはアルバムを閉じた。
旅行後、わたしは吉永さんに手紙を書いた。
イタリア・フランス旅行の思い出を一杯に詰め込んで。
しかし返事はまだ来ていない。
「まあ、仕様がないな。」・・・所詮は客と添乗員、親しくなってはいけないのだ。
AM7時30分。
毎週観ているテレビ朝日の「スーパーヒーロータイム」が始まる。
轟轟戦隊ゴーオンジャーを観るためにわたしはTVをつけた。
ゴーオン・キバ・プリキュアと三本見終わった頃、玄関付近でガタンと音がした。
手紙だ。
わたしはある予感を感じた。
部屋から飛び出すと、わたしは二段飛びで階段を駆け下り、一階に向かってゆく。
強引に手紙の束をわたしは引き出す。
その中に。
その中の一枚に・・・!
【西欧滞在日記】完。2008年12月30日。全54話。スペシャルサンクス=ヤフーデイズの素晴らしき仲間たち。黒猫館&黒猫館館長。合掌。