「ハーイ!ここでツアー解散です!!」
成田空港到着ロビーに吉永さんの元気の良い声が鳴り響いた。
予想していたとはいえ、やはり感極まるものがあるツアー解散の場面であった。
わたしは中里カップル、宮崎老夫婦、関西から来た若い女性ふたり組みとしっかりと握手すると再会を期して別れた。ポツリ、ポツリ、と歩き去ってゆくツアーメンバーの背中を見ながら、わたしは吉永さんと向かい合った。
湿っぽい別れにはしたくない!
わたしは「あとで手紙書きます!!」と言いのこすとクルリと向こうへ振り向くと無言で歩きだした。吉永さんも無言。あまりにそっけない別れにわたしは本当にこれで良いのだろうか・・・?と考えていた。
しかしどう考えても所詮は客と添乗員の関係、この場所で、これ以上は全くどうしようもなかったのである。
夜の高速バスが走り出す。
ひさしぶりに吸う日本の空気はやはり湿っぽかった。
ビュンビュン遠ざかってゆく夜景をわたしはボンヤリと見送っていた。
やがて羽田空港に到着。
そこで秋田行きの国内線に乗りかえ。
羽田→秋田行きの国内線はガランと空いていた。ところどころで疲れたサラリーマンが居眠りしている。
終わったのだ。
旅は本当に終わったのだ。羽田上空の夜景を見ながらわたしは寂しさを噛み締めた。その感触は幼稚園時代の遠足の帰りにも似て、胸の中を風が通ってゆく空虚さが感じられた。
約45分。
あっという間に秋田空港に到着。
秋田空港のロビーで出迎えに来た父と母を見た瞬間、なぜかナミダが溢れた。
夢から醒めたような感触。
「秋田」という容赦のない「現実」にわたしは帰還したのだ。
「よく無事に帰ってきたなあ・・・」と感心している父と「どうだった?どうだった?」とやたら旅の感想を聴きたがる母にわたしは苦笑した。
そして父の運転する自家用車に乗って、わたしは一路家路へ向かった。
(黒猫館&黒猫館館長)