4月15日。
快晴。
朝、6時に起きたわたしはすばやく着替えるとホテルの前に出てみた。わたしは思いっきり深呼吸する。
澄み渡った空。乾燥した空気。
西欧の空気は今日でしばらく吸えそうにないな。
そんなことを考えながらロビーに戻ると、中里カップルの男性のほうがロビーの椅子に座っていた。
朝食はバイキング。
フランスパンを口いっぱいにほお張って、ツアー最後のフランス料理を満喫する。
ふと時計を見るともう時間である。
わたしは自室に戻るとスーツケースに荷物を押し込み、かばんを持ってチャックアウトを済ませた。
ここで吉永さん登場。
昨日の湿っぽいセンチメンタルな雰囲気など嘘だったかのように元気溌剌としている。
「ハーイ!!みなさん、本日はいよいよ帰国です!!これからバスに乗ってシャルル・ド・ゴール空港に向かいます!!くれぐれも持ち物に注意して最後に悔いを残さないように行動してください!!」
ツアー一行がバスに乗り込む。
中里カップルも宮崎老夫婦も関西から来た若い女性ふたり組みもみな一皮剥けたように晴れ晴れとした表情をしている。
わたしはバスの一番前の席に陣取る。するとぼんやりとある考えが浮かんできた。
「果たしてわたしはこの旅行で変わったのだろうか?それともなにも変わらなかったのだろうか?」・・・
そんなことを考えている間にリムジンバスのエンジンがかかる。
帰国の旅路が始まった。
ツアーはまだ終わってはいない。
バスが高速道路に乗って走り出す。
秋田の自宅へ向かって。
(黒猫館&黒猫館館長)