「ビリビリビリーーーーーーーー!!」
電話がなっている。
「なんじゃい。うるせーな。もう朝かよ。全く・・・」などとぶーたれながら、わたしは眼を覚ました。昨日の隣室の異常音で良く眠られなかったのだ。わたしは眠い眼をこすりながら電話に出た。
吉永さん「急いでください!!バスが出ますよ!」
吉永さんのこの一声でわたしはベットから飛び起きた。なんと午前4時55分!出発の午前5時まであと5分しかない!
わたしは顔も洗わず手当たり次第に荷物もかき集めると、手荒にスーツケースに押し込んだ。さらに30秒で着替えると髪も梳かさずに部屋から躍り出た!
エレベーターなど使っているヒマはない!
わたしはスーツケースをかつぎながら階段を二段飛びで駆け下りるとフロントで吉永さんが待っている!
吉永さん「急いでくださいッ!
わたし「う!うはいぃ!!」
わたしは吉永さんと一緒にバスに飛び乗った。その瞬間エンジンがかかりバスのドアが閉まる。関西から来た若い女性二人組みがわたしを観てニヤニヤしている。
ぜえぜえと肩で息しながらわたしはバスの一番前の席に腰を下ろした。
なぜか一番前だと落ち着くのだ。
「今日でイタリアともお別れか。・・・」
なんとなくシンミリするものがあった。
ミラノ・ヴェネチア・フィレンツェ・ローマ、どの都市にもそれなりの思い出ができた。本当に良いイタリア周遊が出来たものだ・・・
と感傷に浸っているとたちまちバスはローマ空港に到着した。
ぞろぞろバスから降り出すツアー一行。
陽気な陽気な運転手・マッシオさんともここでお別れだ。
わたしは勇気を振り絞って「チャオチャオチャオ〜!!」とマッシオさんに握手を求めた。すると「チャオチャオチャオチャオチャオ・・・・・」と物凄い早口でマッシオさんは「チャオ」を口走るとガッシリと痛いほどにわたしの手を握り返してくれた。
マッシオさんと友情を確認し合ってからローマ空港へ入場するツアー一行。EU圏内なので入場の検査もさほど厳しくなく出発ロビーに進むことが出来た。
あと一時間ほどでフランスへ出発。
さらばイタリア、わが第二の母国よ。
たった一週間ほどの滞在だったのにわたしはイタリアがすっかり気に入ってしまった。陽気なイタリア人、美味いイタリア料理、見所満載な観光名所。
しかしそのイタリアともお別れと思うとわたしは双眼をナミダで膨らませた。
もう一度、もう一度、わたしはイタリアを訪れることができるだろうか・・・?
本当に今生の別れかも知れぬと思うとわたしは溢れ出すナミダを止めることができなかった。
「さらばッ!イタリアよ。アイ・シャル・リターン!!」
ツアー一行はどやどやとシャルル・ド・ゴール空港行きの飛行機に乗り込んでゆく。わたしはイタリアと再会の約束を期すとしっかりした足取りで飛行機へ乗り込んだ。
「フランスへ!・・・そしてさらばイタリアよ!!」
ローマ空港から飛行機が飛び立ってゆく。時間はAM7時。
地中海の輝く陽光がひたすらに眼に眩しかった。
(黒猫館&黒猫館館長)