ミラノ郊外。
ラマダホテル。
PM7:00。
モーニングコールと共にキチンと起きたわたしは毛ぐせを梳かして、顔を洗うと、ズボンとシャッツに着替えて、ラマダホテルの庭に出てみた。
素晴らしい朝日!
まるで身体と心を両方冷水にジャブと入れてゴシゴシ洗われるようなさわやかさ!
イタリアの清浄な空気がわたしを包む。
まさに初めてこの旅行でわたしはしみじみと「イタリアに来て良かった!!」というヨロコビを噛み締めたのである。
外国で観る初めての日の出に感動しながら、わたしはラマダホテルのロビーに戻り、朝食を食す。ラマダホテルの朝食は「アメリカンスタイル」と言ってパンとチーズとコーヒーぐらいの質素なものであるがそれでも十分旨い。また不思議なくらい食欲がある。まるで昨日のツカレがウソのようだ。
とここで、添乗員の吉永さん登場。吉永さんはいつも元気一杯だ。
ハキハキした口調で吉永さんが本日の観光について説明する。
「ハーィ!みなさん、おはようございます!!本日の観光について説明します!本日はこれからミラノ市内に入って「スフォルチェスコ城」と「ガレリア」と「ドゥオモ」を見学しまーす!その後昼食を取ってから、バスに乗ってベローナに向かいまーす!ベローナでは「ロミオとジュリエットの家」を見学しまーす!!
ところで・・・」
ここで吉永さんの眼が突然別人のように鋭く光った。
「イタリアでは「スリ」が非常に多いです。本当に多いです。彼らはプロのスリです。それもイタリア人ではありません。東方からやってきたジプシーたちです。イタリア人たちも被害に遭っています!一瞬で、アッという間にやられます!!みなさんカバンは「首から下げて」「カバンのファスナーに手をやって」十二分に注意して行動してください!以上!」
「キターーーーーーー!!」とわたしは思った。安全な日本にいる時にはおよそ想像もできない「イタリアの治安の悪さ」が現実のものとして降りかかってくるのだ。気の弱いわたしはそれだけでまたグッタリとしてしまった。果たして「スリのプロ」たちと互角に渡り合って自分の財産を守れるのであろうか。
キャッシュだけではない。パスポートやカードも心配だ。大丈夫なのだろうか。・・・」
蒼ざめているわたしを尻目に他のカップルや老夫婦たちがどんどんバスに乗り込んでゆく。わたしも恐怖に慄きながらバスに乗り込んだ。
「ボンジョリーノ!」(こんにちは!)
陽気で明るい運転手のマッシオさんの挨拶に答えながらもわたしはスリに対する恐怖を噛み締めていた。・・・
(黒猫館&黒猫館館長)