『新生都市』
鈴木志郎康著。外装なし完本。初版1963年7月10日発行。新芸術社発行(叢書・現代詩の新鋭(2))。発行部数50部に満たずか?定価250円。挿絵=鈴木悦子。解説=高野民雄。
鈴木志郎康は1960年代の代表的詩人・兼映像作家である。1935年東京生。早稲田大学フランス文学科卒。1964年、天沢退二郎、渡辺武信らと詩誌「凶区」創刊。 グロテスクなイメージが横溢する「プアプア詩」で一世を風靡する。。その詩風はブラック・ユーモアに溢れかつ鋭い。言語破壊的な要素は意外と少ないのも特徴といえる。1967年、『罐製同棲又は陥穽への逃走』でH氏賞受賞
さてこの第一詩集『新生都市』は戦後詩集の中でも屈指の入手困難を誇る超・稀こう本である。なにしろ製本段階で不備があって、本書の大多数が破棄されたという。そのため現存部数は50部に満たないと推測される。古書市場に現れることもまずほとんど無い。この本と高橋睦郎の『ミノ あたしの雄牛』が戦後詩集の二大最難関と言っても過言ではないだろう。古書価も高いときは15万円を超えるときもあるらしい。もし奇跡的に古書店で発見されたら、迷わずに即、購入されることをお勧めする。
さてこの鈴木志郎康の第一詩集『新生都市』は一般的に志郎康の持ち味であると考えられている「プアプア詩」的要素はまだほとんど現れていない若々しい最初期の詩風に満たされた詩集である。しかし後年の不条理とブラック・ユーモアの影はすでにじわじわと現れており、志郎康のファンなら一読しなくてはならない詩集であるだろう。
第二詩集でのH氏賞受賞の予感を感じさせる若き志郎康の輝かしい第一詩集であり、そしてまた戦後詩の書誌&研究的にも極めて重要な詩集である。
『罐製同棲又は陥穽への逃走』
鈴木志郎康著。外装なし完本。初版1967年3月13日。季節社発行。限定333部。ソフトカバー並製。
さて『罐製同棲又は陥穽への逃走』は鈴木志郎康の第二詩集。ちなみに第一詩集は『新生都市』(新芸術社)。季節社発行。この本は謎が多い。「異装本(黒表紙本か??)」の存在を囁く者もいれば「帯」がついている本を見たという者もいる。しかしその真相は全く不明。古書価は30000円〜38000円程度。機会を逃せば入手は難しいが全く出ないというわけでもないので、一年程度の探求で入手可能であろう。
さて本書の出版社「季節社」はどうも塚本邦雄の出版社である「書肆 季節社」とは別の出版社であるらしい。混同しないように読者諸氏にはくれぐれも気をつけてもらいたいものである。
『家庭教訓劇怨恨猥雑編』
鈴木志郎康著。思潮社発行。外装なし完本。初版1971年10月25日。ソフトカバー並製
この詩集は鈴木志郎康の第三詩集。この書物ははっきり言ってしまえばどこにでもあるといってよい。古書価も2000円程度から買える。志郎康の持ち味が一番でていてかつ非常に解りやすい。ユーモア感覚も抜群で笑いながら読めるという稀有な詩集である。「詩集とは難しいもの」と思い込んでいる読者諸氏がいたらぜひこの詩集を読んでほしいと思います。詩集に対する見方が変わります。初心者にもお薦めできる。筆者もこの詩集から詩の世界に入りました。
(黒猫館&黒猫館館長)