『出発』

 

 

第一詩集。新芸術社発行。フランス装完本。初版1964年1月20日。

 吉増剛造は、1937年東京出身。詩誌「ドラムカン」のリーダー的詩人。第一詩集『出発』では若者の風俗に材を取り、スピード感溢れる詩風で颯爽と詩壇に登場した。その後、第二詩集、第三詩集と進むに従い、幻想的・SF的色彩を強め、現代の呪術詩ともいえる独特の詩風を確立する。最近は詩の朗読でも活躍している。  

 本書は第一詩集。さて本書『出発』は最近全く出なくなってしまった。もともと新芸術社のこの詩集シリーズは出ない本が多いがこの詩集は極めつけに出ない。マニア泣かせの一冊である。さらにこのシリーズに共通していることは、造本の問題だろうが「割れ本」が多いということだ。美本を発見するのは相当に困難だろう。それでもどうしても欲しい人は執念で探すしかないだろう。古書価も最近急騰している。できるだけ早く見つけないとあとで泣きを見るかもしれない。とにかく難しい本である。

 

 

『黄金詩篇』

 

 

 第二詩集。思潮社発行。カバー・筒箱入り完本。初版1970年3月1日。(注意!重版も存在します!)赤瀬川原平装丁・装画。この本は最近めっきり出なくなってきたので、ファンの人はできるだけ早く買ったほうがいいだろう。赤瀬川原平が装丁しているので、それだけで買う古書マニアもいるという。人気のある本である。高見順賞受賞。注意!箱欠本を堂々と売っている古書店がたまにあるので、筒箱の有無を確認してから買うのが望ましい。

 

 

『頭脳の塔』

 

第三詩集。青地社発行。カバー・函完本。別冊「補完」付き。初版昭和46年1月30日。装丁長尾信

 この本の入手難易度は中程度。チャンスを逃さなければ意外と簡単に入手できるだろう。しかし別冊が無い本が多いので注意が必要。箱欠本も多い。内容は吉増剛造が頂点を極めたと言い切りたいほどの迫力に満ち溢れた詩群が収録されている。特に表題作「頭脳の塔」は詩のファンなら必読の一編だろう。吉増剛造初心者はこの本から入門するのが望ましいといえる。

 

 

 

(黒猫館&黒猫館館長)