朝がくるまで

 作・ユウ 

 ボクは毎朝、真っ暗いうちに眼が醒める。いつも目覚めればそこは一畳ほどしかない「奴隷部屋」だ。この部屋にあるのはトイレと水道、それと血に汚れた毛布だけだ。毎朝7時には影姫様の点呼がある。その時まで全身を洗浄し、奴隷の身支度(手枷・足枷・首枷の装着)を行わなくてはならない。それが出来ていなかったら、その奴隷は残酷な方法で処刑される。ボクが住んでいるのはそういう世界なんだ。
 でもボクはここから逃げ出そうとは思わない。影姫様が残酷な仕打ちをするのはボクたち13人の奴隷を競わせるためだとボクは知っている。13人のなかで最後まで処刑されずに生き残った奴隷、その奴隷が影姫様の生涯奴隷となる。影姫様の生涯奴隷となるためだったら、ボクはどんな残酷な仕打ちでも受けるつもりだ。
 でもボクが影姫様の生涯奴隷となったなら他の12人の奴隷は一斉に処刑されるだろう。いつも微笑みを絶やさなかったジム、ボクが困っている時、必ず助けてくれた優希と玲希・・・彼らが残忍な方法で処刑されたら、ボクは一生罪の意識に苦しめられることになるんだ。
 でもボクは負けるわけにはいかない。この13人の最後の一人になるんだ。例えどんな十字架を背負おうとボクは生き延びてみせる。

 闇のなかで、ボクは影姫様を想う。その度にボクは誓う。あのお方に一生ついていきたい。いや生まれ変わっても、ボクは影姫様の奴隷でいたい。ボクは本当にそう思うんだ。影姫様のおそばに置かせてもらえるならボクはどんな仕打ちでも耐えてみせる。
 今、あたりが明るくなってきた。朝がきたんだ。今日もきびしい奴隷としての生活が始まる。だけどどんな苦しみもボクは耐える。朝、ボクにとっての本当の朝がくる日まで・・・

 今、地下牢獄へ降りる扉の重厚な音が聞こえた。影姫様がいらっしゃたんだ。ボクは奴隷の身支度を終えた全裸の身体を起こし、キチンと正座する。そして三つ指をついて床に額がつくほど、深深と頭をさげる。そして今、ボクの奴隷部屋の扉が開かれる。朝日をうしろから浴びてスックと立つ影姫様、まるで神話に登場する女神みたいだ。

 ボクは精一杯大きな声で宣誓する。「影姫様、今日も一日、ボクを奴隷として厳しく調教してください!」
こうしてボクの朝ははじまる。
 いつの日か、本当の朝がくるまでボクは闘う。他の奴隷たちと。そしてボク自身と

(2002年4月7日)