扉を開けたら(特装版)

  

伊藤文学著。ロマンの泉美術館発行。初版1994年8月1日。ハードカバー(普及本はソフトカバー)・カバ完本。(普及本は帯つき)内藤ルネ序文。武田肇装釘。オールカラー。
  

 あの「薔薇族」の編集長で有名な伊藤文学氏が私財をなげうって設立した「ロマンの泉美術館」に関するエッセイの本が本書。「ロマンの泉美術館」は主にバイロスやアールヌーボー時代の蔵書票を主に展示する美術館である(新潟)。本書は新潟日報の「晴時計」というコーナーに連載された。

 本書を一読すれば、伊藤文学氏の趣味の良さ・そして人間としての器の大きさをありありと感じさせてくれる内容となっている。バイロスやルイ・イカールに関する造詣の深さ、そしてたったひとりで美術館を経営する大変さとそのぶんの喜びがひしひしと感じられる。

 また本書は内藤ルネが序文を寄せていたり、詩人・武田肇の趣味の良い装釘が光る。まさに「ポルノではない薔薇族の本」としてわたしは珍重したい。

 昨今の若いゲイ諸君も伊藤文学氏のような偉大な先達の仕事を見習って、ますます自分のセンスを磨いてほしいと筆者は心から願う。

 普及版は非常に稀にブックオフ的古書店に転がっていたりするが、特装版はめってなことでは入手できない。本書にとことん惚れこんだ人は特装版を探してください。

 

(黒猫館&黒猫館館長)