熱い罠

  

ジョン・プレストン原著。風間賢二訳。初版1993年12月20日。白夜書房刊。カバ帯完本。新書版。 

 1990年代の初頭に「ラヴェンダー・ロマンス・シリーズ」として白夜書房から続々刊行され始めた叢書の第一弾。この当時はゲイ小説と言っても少女向け「やおい小説」(ボーイズ・ラブというジャンルは当時まだ存在していなかった。)が主流であり、本書のような本格的ゲイ小説が本邦で翻訳されるということは革新的な出来事であった。
 本書の著者、ジョン・プレストンは彼自身がゲイであり、またゲイ・ポルノ小説専門の作家である。本書は「古典的なゲイSM小説」として米国では有名であり、本書を演劇化した舞台さえ存在しているという。
 その理由は本書を一読すれば一目瞭然であろう。25歳の青年が「ミスター・ベンスン」と呼ばれるハードなS主人に徹底して調教されるというストーリーで、ゲイSM嗜好の読者には堪えられない内容となっている。昨今の日本のゲイSM小説より遥かにハードでかつ面白い。風間賢二による翻訳も
優れている。
 ハードゲイの方々、またハードゲイの生態の興味のある方々には一読の価値のある小説であると強くわたしは推薦したい。なお、ラヴェンダー・ロマンス・シリーズは後続の書物ではこれほど衝迫力に充ちた小説はその後、発行されなかった気がする。

 さて本書は最近ブックオフ的古書店からも姿を消してしまったので、ネットで注文するのが一番確実な入手方法であると思える。

 名著であることを保証する一冊。

 

(黒猫館&黒猫館館長)