『半獣の拘束具』

阿部譲二著。マドンナ社発行。初版発行年不明。カバ完本。　

　８０〜９０年代のアダルト文庫界をフランス書院文庫と共に人気を二分したマドンナ・メイト、本書はそのマドンナ・メイトが新機軸として打ち出した男性マゾヒズムをテーマとする作品群「マドンナ・ミストレス」の第一回刊行本である。さすが第一回刊行本だけあってなかなか読み応えのあるＳＭ中篇を四作収める。この本より後続本はそれほどパワーのある作品が無かった気がするので、この『半獣の拘束具』を「マドンナ・ミストレス」のベストに推したい。

　さて本書は「生贄の汚辱姉弟」「屈辱の新婚旅行」「奴隷犬の婿養子」「転落の改造人間」の四篇を収める。この中で「生贄の汚辱姉弟」のみ２０年ぐらい前の『別冊ＳＭスナイパー』に掲載されたことは記憶している。恐らく他の三篇は本書のための書き下ろしであろう。

　本書の特徴は「最初からＭ男が出てくる」パターンではなく「普通の男が女王様によってマゾヒストに改造される」というシュチュエーションである。そのため四篇ともラストは奴隷に堕した男が射精する（＝被虐の歓びに目覚める）という終わり方である。これはややＳＭ小説としてはステレオタイプであるが、「正統派ＳＭ小説」といえばそう言えるだろう。

　「転落の改造人間」のみ男の靭帯を切って歩けなくしたり、ノドを焼いて話せなくしたりと、肉体改造の趣向が盛り込まれている。こういうものは好き嫌いがわかれるであろうが、「過激さ」を求めるマニアなら素直に喜ぶべきものであろう。

　さてこの「マドンナ・ミストレス」は筆者は５冊ほど確認しているが一体何冊発行されたのは不明である。筆者はこの「マドンナ・ミストレス」の全貌を解明しようと調査中である。全冊確認できたらこの場所でその全貌を発表する。

　本書はまだブックオフ的古書店で発掘可能。根気で探せば必ず出てくるであろう。