『青年(三国結盟慶祝号)』
大日本青年団本部発行。初版昭和15年12月1日。外装無し完本。
戦前の青少年向け代表的右翼雑誌が本書。あえてこの号を取り上げた理由は、古書マニアの間では表紙に枢軸国三国旗が掲げられているところがなんとも「カッコイイ」と人気があるためである。
大木惇夫の詩「日獨伊行進歌」が巻頭に掲げられていたり、外務大臣・松澤洋右の「新体制と青年の心構え」という檄文としかいいようがない文章が載っていたりとなんとも呆れるばかりの大政翼賛ぶりである。
しかしそれだけではなく吉田絃二郎の伝記小説「乃木将軍」が載っていたり佐藤春夫作詞の「興亜行進曲」の楽譜、さらには山下清の師匠である式場隆三郎の「結婚の責任」という人生論的エッセイが載っていたりと内容的には読み応え十分のボリュームである。
総じて第二次世界大戦中の青少年の心情・生活ぶりを知るには第一級の資料といえるだろう。このような書物を読むことでファシズムのプロパガンダはどのように庶民の生活にじわじわしのびよってくるのかを読者の諸君に勉強していただきたいものである。
さて「青年」という雑誌であるが巻によって人気があるものとないものがある。人気の高い巻はなかなか出ないし古書価も高い。ちなみに全号揃えるのはほぼ不可能に近いと思われるのでそのような蛮勇は抱かないほうが無難である。