ルナマリア様がみてる

(旧題・『アスランの秘密』)

 

(ハムちゃま・作)

(↑シャワー中のアスランw↑)

 

 アスランはミネルヴァのシャワー室でシャワーを浴びていた。あの暑苦しいZAFTの軍服を脱いで全裸で湯を浴びる感触、これはアスランにとって一日で最も幸福な時間といえた。
 「今日の戦闘もきつかったな・・・」などといいつつ、実はアスランはアークエンジェルに存在するという温泉「天使湯」のことをぼんやり考えていた。「カガリの話によるとアークエンジェルには『天使湯』という温泉があるという、、、不公平だ!!ミネルヴァになくてアークエンジェルにあるもの、それはただひとつ温泉だ。この温泉の有無はあまりに大きい落差だ。戦闘で疲弊した兵士にシャワーと温泉のどちらがいいか聞いてみろ・・・グラディス艦長よ。ZAFT兵士の士気を高揚させるには『温泉の存在』が不可欠だ。」そんなことをぼんやり考えながらアスランはシャワー室のドアを掴んだ。

 「アスラン・ザラ出る!!」

 という掛け声と共にアスランはシャワー室から出た。そして洗面台に向かう。するといつも使っている「カロヤンS」という育毛料が底をついているではないか。アスランは激昂した。

 「ルナマリア!カロヤンを持ってこい!!今すぐにだ!!」

 しばらくするとルナマリアがコツコツと男子更衣室のドアを叩いた。ルナマリアはなぜか怯えている。
「あの、、、アスランさん、カロヤンSをここに置きます。」タタッとルナマリアは駆け足で逃げていった。
 ぎー、と男子更衣室のドアが開く。その隙間からアスランの逞しい右手がにゅーと伸びてきてカロヤンSを掴むとまたすーと男子更衣室に引っ込んでいった。


 「変!変ですよー。アスランさんったら。」
ルナマリアがシンの寝室に忍び込んで小声で話しこんでいた。
 「あのな、ルナ、今は夜の一時だぞ。明日の起床時間に遅れたらどうする?」
軍隊では時間厳守は鉄則だ。もし明日の起床時間に遅れたら厳しい罰則を科せられるに違いない。シンはうんざりした顔で言った。
 「アスランさんったら絶対男子更衣室にわたしを入れないんですよ!なにか秘密が、、?」
興奮するルナマリアを制してシンが言った。「お前なー、男だって異性に裸見られたくないのは当然だろ?別に不思議じゃないぜ?」
 「そういうシンったら今、裸じゃない?」
そうなのだ。シンの私室だけではなくミネルヴァ全体の空調が良くないので個室は夜間は蒸し暑くなるのである。シンはしようがないのでトランクス一枚で寝ることにしていた。いまシンはトランクス一枚の半裸である。 「おまえに見られたって恥ずかしくねーよ。ルナ。」
 「それ、どういうことですか!」ルナマリアが叫ぶ。「わたしを異性として認めてないってことですか!?」シンはベットに横たわり、ポテトチップをバリバリやりながら答えた。「そのとーり。」 
 「ひ、ひどいです、、、」泣きそうになるルナマリアをシンがなだめた。こうゆう女には飴と鞭が必要だな・・・。シンは心のなかで呟くとアスランに対して普段から考えていることをルナマリアに言った。「泣くなよ、ルナ。アスランの隠してること一緒に暴いてやろうぜ。」ルナマリアの顔が突然明るくなった。「本当ですか?でもどうやってアスランさんの秘密を暴くんですか!?」
 全くどういう性格してんだ?このヘナマリア・・・と呆れながらシンが答えた。「ああー、他人を絶対更衣室に入れない。このことはなにを意味していると思う?ルナ?」ルナが3分ちょうど考えてから答えた。「アスランさんは身体のどこかに他人と違うところがある!それを隠したがっている!!」
 「いい線いってるぞ。ルナ。でもそれは手が一本ないとか足が一本ないとかじゃないよな?アスランは健康体でMSにも乗れる。すると・・・」「もしかして!」ルナマリアが叫んだ。「アスランさんは一ヶ月に一回の割合でカロヤンをわたしに持ってこさせます。すると頭髪関係のこと!?」
 シンがベットからすくっと起き上がった。「それだよ。俺もアスランのでこが気になっていたんだ。あのでこはどうみても広すぎる。不自然だ。とすると・・・」

 「ゲー◎ー関係!?!?」

 「バカッ!?声がでかいぞ!ルナ!!いま真夜中の2時だ!!」
 しゅんとなったルナマリアが呟く。「とするとアスランさんのあの頭はズラ、、、」
 「その可能性は大いにあるな。でどうやってアスランの秘密を暴くか?だ。」ルナマリアの眼がなぜか突然輝いた。「アスランさんの大事な場面でズラを外してしまう!」
 「おまえ、アスランにウラミでもあるのか?ルナ。」ルナマリアが叫ぶ。「ウラミなんてそんな!でもわたしいつもアスランさんにおちょくられるんです。スカートが短いのはみせたがってるんだろ?とか。だからその仕返しに。」シンが神妙な声で言った。「わかった。アスランは週に一回、オーブの公園でカガリという女とデートすることになっている。その時にズラを外してしまおうぜ。」ルナマリアの眼がますます輝く。「わー、すごい。いよいよアスランさんの秘密が暴かれるんですね!!」このブタマリア・・・シンはルナマリアを軽蔑しながら心で呟いた。


 オーブ街三番街中央公園。この公園はオーブでも屈指の大公園である。沢山の木々が乱立している。池もある。池に橋が架かっている。売店がある。その売店から買ったカプリコーンをぺろぺろ舐めながらルナマリアとシンはいつもアスランが座るベンチの後ろにある大きな松の木の枝にかがみこんでいた。そこはベンチの真上である。
 「ちょっとシン、押さないでくださいよー。」ルナが呟く。「バカ、こんな木の上の登ろうといったのはお前だろ。それより釣り糸をまだ下げるなよ。」ルナマリアが釣竿と釣り糸を一緒に持ってつぶやく。「うまくいくかなー。」

 その時、アスランが現れた。アスランは上下とも白いスーツでバリッと決めている。格好良すぎる・・・シンの眼にもアスランの秘密を早く暴いてやりたい欲求がムラムラと湧き上がってきた。シンの脳裏に浮かぶかっての屈辱・・・。


 「戦争はヒーローごっこじゃない!力を持つものなら力を自覚しろ!」・・・(バシッ!)


 あの時のビンタの感触がまだ頬に残っているぜ・・・みていろよ、アスラン・・・シンが心のなかで怒りの文句を呟いている間にアスランは真下のベンチに座る。

 ルナマリアとシンはじっとカガリが現れるのを待った。10分、20分、なぜかいつまでたってもカガリは現れない。ルナマリアとシンがいらいらし始めた時、その者は現れた!

 「やあ、アスラン、、、待った??ゴメンネ・・・ラクスがうるさくって・・・」

 なんと現れたのはキラであった。ルナマリアとシンは動転した。どういうこと!?アスランとキラは一体なにを・・・。

 「ねえ、アスラン、食事にする?それとも直行?」キラがぴったりした上下共黒革のコケティシュなコスチュームでアスランを誘う。いかにもヤバイ雰囲気が漂っている。
 その瞬間、ルナマリアが思い切って釣り糸をアスランの髪に引っ掛けてそのままズボッと吊り上げた!

 「!」キラが絶句する。

 「・・・・!?」アスランはなにが起こったのかつかめずにあたふたとしている。

 「!!」
 「!!!」

 ルナマリアとシンも絶句している。なんとアスランは頭に「水泳用キャップ」を被っているのだ。なぜ?
どうして?ルナマリアとシンが眼を回す。キラが叫ぶ。「や、やめてよね、、、そんなアタマのアスランなんか嫌いだ!!」とキラはアスランをぶっ飛ばすとそのまま公園の出口まで走ってどこかに行ってしまった。


 アスランが憤怒の形相でむくむくと松の木に登ってくる。黄色い水泳帽を被りながら。。。


 シン・ルナマリア「キャーーーーーーーーーーーーー!!!」


 それから一ヶ月が過ぎた。アスランにあの日ボコボコにされたルナマリアとシンは再び深夜、シンの個室で話し合っていた。あの黄色い水泳帽の下はどうなっているのか。なぜアスランはキラと密会していたのか。すべては深いヴェールに包まれているようであった。ルナマリアが呟く。
 「でもわたし絶対アスランさんの秘密をいつか暴いてやります。」シンはこのルナマリアの異常なまでのアスランに対する執着はもしかして愛情の裏返しなのか?などと考えながら呟いた。

 「そうだな、、、ルナマニア・・・。」


 ミネルヴァの夜は静かに更けてゆく。アスランの秘密を暴こうとするルナマリアの奮闘はまだ始まったばかりである。