『怪獣ウルトラ図鑑』(スペル掲載版)

   

大伴昌司著。秋田書店刊。函完本。初版1968年5月30日発行。 

 さて、なぜこの本が「猟奇」のコーナーに置かれているのか?と訝る人も多いことだろう。昔の怪獣好きの小学生なら一度は手にとったであろう本である。噂によると現皇太子が初めて買ってもらった本もこの本であるという。
 それではこの本の「猟奇たる由縁」はどこにあるのか?それは端的に言えば「スペル星人」が掲載されていることである。本書の第15版までスペル星人は80ページにしっかり掲載されている。しかし16版から突如としてスペル星人はガッツ星人に差し替えられた。いったいなにが起こったのか?

 わたしはことの顛末を詳しく知らないがスペル星人が「被爆宇宙人」だというので被爆者擁護団体からクレームがついたらしいのである。その後、このスペル星人は円谷プロの黒歴史として完全にその存在を抹消されてゆく。

 見ることができない者を人は見たがる。これは見世物小屋から衛星博覧会に至るすべての「奇なるもの」の存在根拠である。本書の古書価が急騰し始めているのも、スペル星人という「禁忌」を「侵犯」するスリルを味合うためといったら言い過ぎであろうか?いずれにせよわたしはそのような理由で本書『怪獣ウルトラ図鑑』を「猟奇」のカテゴリーにいれたのである。本来ならばスペル星人の画像をここにアップするべきであろうが、とてもわたしにはその勇気はない。どうしても見たいひとはぜひ購入して欲しい。健闘を祈る。

 さて本書は目録などで単に「重」と書かれているので実際に手に取ってみて何版か確認するのが肝要である。16版以降は古書価は急落する。くれぐれも間違いのないようにしっかり買って欲しいものである。