言わずと知れたマゾヒズムの大御所である。「マゾヒズム」という語はクラフト・エビングの『病的性心理」(1886)によって「発明」された。その語源はドイツの小説家ザッヘル・マゾッホであることはいうまでもない。これよりマゾッホの書誌を掲載する。
◆参考 レオポルド・リッター・フォン・ザッヘル=マゾッホ著作リスト
『マゾッホ選集』全4巻(桃源社)
第一巻『毛皮を着たヴィーナス』(昭和51年、種村季弘訳)→河出文庫、昭和58年・平成16年
新装版
第二巻『残酷な女たち 他』(昭和52年、飯吉光夫・福井信雄訳)→河出文庫、平成16年
「残虐な女たち」…ルボミルスカ侯爵夫人の熊、サイダからきた姉妹、鴉、ハトヴァンの女僭
主、公妃ライエフスカ、コサックの妻、サロンの姉妹、指責め
「風紀委員会」(以上、福井訳)
「醜の美学」(飯吉訳)
第三巻『ガリチア物語』(昭和51年、高本研一訳)
「死者たちは飽きることがない」「収穫祭」「姿を変えた司祭」「旅役者たち」「イエズス会士」
「橇の遠乗り」「われらの議員」「盗賊マガス」
第四巻『密使』(昭和52年、種村季弘訳、歴史小説)
「密使」「コロメアのドン・ジュアン」
『毛皮を着たヴィーナス』の翻訳
『性の受難者』(大正12年、オーストリー・グラアツ大学教授ザッハア・マゾッホ著、青樹繁訳、
小西書店) ※巻頭言より、『毛皮のヴヰナス』独語原典からの本邦初訳とわかる。
『毛皮を着たヴィナス』(昭和23年、治州嘉明訳、鴨居堂書房)
『毛皮を着たヴィーナス』(昭和32年、佐藤春夫訳、英訳からの重訳、講談社、雑誌初出「群
像」昭和32年7月号)
『毛皮のヴィナス』(昭和43年、伊藤守男訳、仏訳からの重訳、二見書房)
その他の紹介
「夜叉」(明治40年、徳田秋声訳、「文芸倶楽部」第十三巻九号二十周年記念号、博文館に収
録) ※原典不明。
『美女美男綺譚〜求愛術』(昭和6年、木村毅訳、「世界猟奇全集」第二巻、平凡社)
「ヴィナスとアドニス」「箍張女袴を着けたネロ」「求愛術」「不機嫌を買ふための努力」「前哨に
立つ女」「笞を持つたキュピット」 ※「マシィソン版の英訳」からの重訳
『カテリーナ二世』(小野武雄訳、「世界セクシー文学全集」第二巻、新流社版) ※翻案に近
い。
『黒女皇』(昭和51年、沼昭三著『ある夢想家の手帖』第六巻、潮出版社) ※「公妃の復讐」
「黒女皇」抄訳解説収録。
原典
Sacher-Masoch:Die Russischen Hofgeschichten.4 Bde Leipzig
1873
Sacher-Masoch:Kaunitz,der Roman eines osterreichischen
Staatsmannes. Wiener Verlag
1945
Sacher-Masoch:Eine Galizische Geschichte.1846. Schaffhausen
1858
研究書
種村季弘『ザッヘル=マゾッホの世界』(筑摩書房→平凡社ライブラリー)
R・フォン・クラフトエビング『変態性欲心理学』(河出書房)
R・フォン・クラフトエビング(柳下毅一郎訳)『変態性慾ノ心理』(原書房)
ジークムント・フロイト(懸田・吉村訳)『性欲論三篇』(人文書院『フロイト著作集5』)
ジークムント・フロイト(小此木啓吾訳)『本能とその運命』(人文書院『フロイト著作集6』)
メダルド・ボス『性的倒錯』(みすず書房)
ジル・ドゥルーズ(蓮實重彦訳)『マゾッホとサド』(晶文社)
ブラム・ダイクストラ『倒錯の偶像』(パピルス)
ジョン・K・ノイズ『マゾヒズムの発明』(青土社)
映画モニカ・トロイト、エルフィ・ミケシュ共同監督作品『誘惑・残酷な女』(1985)(※トロイトの学位論
文はサドとマゾッホに関する論文)
映画『作家マゾッホ愛の日々』(原作フィリップ・ペラン、黒主南訳、富士見ロマン文庫。ただし、
内容については脚色が多く、マゾッホの実像を知るには不向きである。)