影姫参上

 

 

<影姫>

・・・くらやみ男爵。
わたしの妹をここまでいたぶった以上、唯で帰れるとは思わないほうがいいでしょう。
覚悟はよろしいですね? 

 

<くらやみ男爵>

ふふ・・・ふぉーーーーーーふぉふぉふぉふぉーーーーー・・・

影姫よ。
いったいおまえになにが出来るというのだ?
欲求不満の中年女めが。
お得意の鞭でわたしをたたきのめそうというのかな?
ふぉ! 

 

<影姫>

くらやみ男爵。
かって様々な惑星に現れては、その惑星の生命体を滅亡させてきた貴方にしてはお粗末な言い草ですね。

その調子ではわたしの黒猫館での本当の使命も知らないと見えます。
いかがですか? 

  

 

<くらやみ男爵>

おまえの使命だと?

ふぉーーーーーふぉふぉふぉふぉーーーー・・・

おまえのいつもやっていることといったらマゾ男とのサドマゾ遊び。
その程度ではないか?

この淫乱な道楽女めが。
笑わせるなッ!!
黒猫館より風俗店へ行け。
それがおまえにはお似合いだよ。・・・

もっともその歳では何処の風俗店でも雇ってもらえないか!

ふぉーーーーーーふぉふぉふぉふぉーーーー・・・・

 

<影姫>

馬鹿者ッ!!

このわたしにそのような口を利くとは。
ずいぶんみくびられたものですね。

ところでくらやみ男爵。
このわたしの名前の由来をご存知か? 

 

<くらやみ男爵>

おまえの名の由来だと!?

ふぉーーーーふぉふぉふぉーーーー・・・

せいぜいSMクラブの源氏名ではないのか?

ふぉ! 

 

<影姫>

下世話な。
なんと下世話な。

貴方のような糞便にたかる銀蝿には教えたくないのですがいいでしょう。

教えてあげましょう。

 

<くらやみ男爵>

「糞便にたかる銀蝿」だと?

その言葉高くつくぞ・・・ 

 

<影姫>

黒猫館とは常に影の存在。
決して人目のつく場所にでてはならない。

黒猫館はある時は古代仏蘭西のガリア地方。
またある時はルーマニア山間部。
またある時は英国アイルランド。

常に人目を避け、移動してきました。

そして14世紀神聖ローマ帝国オットー大帝の御代に独逸国シュバルッツバルトに落ち着いた。

しかし現在の黒猫館はもうそこには存在していません。 

 

<くらやみ男爵>

ほうほう・・・
長々と退屈な講釈を始めたか?

まあいい。
これも一興だ。

聞いてやろう。

おまえの「秘密」とやら。 

 

<影姫>

20世紀末期。
「IT革命」(Revolution of information technology)が巻き起こりました。
そこで前黒猫館館長は黒猫館を物質の世界から電脳の世界、つまりインターネットの世界に移植したのです。

インターネットはいわば人間世界の影の世界。
黒猫館が存在するには絶好の場所と判断したが故です。

しかしインターネットの世界は魑魅魍魎の巣食う世界。

くらやみ男爵。

あなたがネットの世界に出現したのもそこが目的ではないのですか?

  

<くらやみ男爵>

ふふ・・・ふぉーーーーーーふぉふぉふぉーーーーー・・・・

いかにも。

わたしがインターネットに眼をつけたのは人間の弱さが爆発する所ゆえ。
人間はインターネットの世界に向き合うやいなやその本性を剥き出しにする。

みよ。この電脳の魔界を!
毎日のように争い、謗りあい、誹謗中傷が飛び交っておる。

これほどわたしが人間どもにつけこみやすい場所もあるまいて!

パソコンは人間の悪意を増幅させる。
正に現代のブラックボックス。
わたしにとってはこれ以上ありがたい機械もあるまいて!!

ふぉーーーーーーーふぉふぉふぉーーーー・・・

 

<影姫>

わたしと光姫が必要とされるのは黒猫館を守る故。
この電脳の世界で黒猫館が生き延びるためわたしという存在が必要となった。

 

<くらやみ男爵>

それではおまえは黒猫館の番犬というわけか!?

どうりで犬に似た顔をしていると思ったわい!!

ふぉーーーーーふぉふぉふぉーーーー・・・

 

<影姫>

くらやみ男爵。
しかしその使命はわたしという存在の本当の表面的な事実でしかありません。
わたしと光姫、その存在の本当の「秘密」。
その「秘密」とは・・・

 

(ドッ!!!・・・ドオーーーーン!!)

 

<影姫>

地盤沈下!?


<光姫>

「闘技場」の地面が抜ける!!オネエ!!!

  

 

(ズズズズ〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!)

(陥没する地下四階。大量の土砂の波に吸い込まれてゆく影姫と光姫。)